TIAMO14(東方神起ホミン小説)
電話を手に取って暫く眺める画面に呼び出した名前
いざかけてしまうと少し長めの呼び出し音に萎縮していくような心
はい、とつながった電話にためらいがちにもしもしと返すとおう、どうした?なんて変わらない挨拶に胸をつかれ
電話しておきながらの沈黙に疑問符混じりの声
「なんだ…?何かあったのか?」
何か、と言う言い方に奇妙な響きがある
「何かって?」
「…あいつから連絡行ったろ?ちゃんと謝ってたか?まさかまた妙なことに…」
と言うので慌てて否定した
「違うよ。あいつの事じゃないしその話はもういい…済んだ話だ」
と言うとそうか!と飛び出す安堵と喜びの声に穴があったら入りたい気分
「僕も悪かったし…皆が止めてくれてたのに」
返事を待たずに早口で
「それにこないだ断ったのは仕事じゃなかった。あれは…」
言いかけるとなあ、とかぶせるように
「俺たちはお前の恋人じゃないんだから逐一気を使わなくていいんだぜ?来れないならそれで構わないんだし…それにちょっと嘘ついたからってわざわざ釈明しなくていいよ…子供じゃないんだから」
「どうして?」
「…何がだ?」
「どうして大人になったからって嘘ついていいんだ?ちょっと図体がでかくなってシワが増えたくらいで?」
「ユンホ」
「子供の頃嫌だった事は大人になっても嫌だ…友達にまで嘘ついたりしたくないよ。僕はもうそういう世界に飽きるほどいてうんざりしているんだから」
電話越しにも相手の驚きが伝わってきた
仕事をしてきて10年余り…友達に愚痴らしい事を言ったのは始めてだった
聞かれてもいつも楽しいと
そうじゃない話題にはただ黙って話題をかえた
「お前そんなんでよく芸能界にいるな…芸能界なんてのは嘘つくだけじゃなく自分にも他人にもその嘘を信じこませないと駄目な世界じゃないのか」
なんて言うのに僕はつい笑ってしまう
「なんだよそれ」
「友達に嘘ついて家族をだしにして酒と女とギャンブルにはまってやっと一人前の芸能人になれるんだろ…そう思うとお前なんてまだまだだな」
僕は思わず笑ってしまった
「どんなイメージだよ…」
馬鹿げた軽口に暫く笑いあって突然になあユンホ、と
「お前は堂々としてればいいんだ。いくら使おうがどぶに捨てようがお前の自由なんだから…お前がどんなに苦労して稼いだ代価なのかお前が言わなくても俺たち皆が知ってる…誰も文句は言わないよ。ただ…」
「ただあの時お前はやめるべきだった…矛盾してるけどな。でも友達に本気で止められたら素直に聞くもんだ…俺たちだって滅多な事じゃなきゃそんな風に口出ししたりしないよ」
「…分かってる」
と返すと急に真面目な口調
「俺たちも悪かった。なんていうかびびっちゃったんだよ…大金を平気な顔でバンバン使うお前を見てなんか…怖くなったんだ」
噛み締める唇から漏れた吐息が沈黙の中で揺らいで消えた
さぞ鬼気迫る様子をしていたんだろう
あまり覚えていないけどあの時僕は普通じゃなかったもの…
「…最初はあいつが一番心配してたんだ」
まあ最後に馬鹿したけどな、なんて…躊躇いがちにかけられた言葉
「でもあいつが馬鹿するのは今に始まった事じゃない…そうだろ?」
僕はただ頷く事しかできない
「あいつにも電話したのか?」
「これから皆にするよ…最初はハードルが高くて」
と言うと俺は低いってのかと冗談混じり
「なあ」
「うん?」
ほんの少しあらたまった声
「お前が帰ってくるたびに俺たちはなんか不思議だったんだよ。テレビに出てアイドルになって凄いスターになってるってのにお前は帰ってくると出会ったまんまのただのユンホで…」
「でもこないだ始めて本当は俺たちお前がこのまま…変わっていった方が幸せなんじゃないかって。同じ世界で話のわかる奴といた方がお前は楽なんじゃないかって…」
「そんな馬鹿な話があるかよ!」
思わずの怒号に訪れる重い空気のあと耐えきれないみたいな忍び笑いが
「…騙したな」
「なんてこと思うわけがないだろ?お前は俺たちにはただのユンホだよ…それに変わるわけないさお前はデビューもしてない頃からスターみたいだったし」
「なんだよそれ」
「いつも踊ってたろ?アイドルになりたいって言ってた…覚えてるか?」
故郷の公園…放課後の学校で
1人の部屋…街の雑踏の中
覚えているかだって?
忘れようとしたって忘れられるはずがない
「僕は…」
「僕は今でも自分がアイドルに憧れて踊っていた頃のまんまに思える時があるんだ。すべてが夢で…僕はまだ近所のホス公園にいるんじゃないかって」
「ああ…」
「そこで皆と馬鹿話してるんじゃないかって…起きたらそうなるんじゃないかって。なんか馬鹿みたいなんだけど…」