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東方神起  ホミン小説

現実が軽く妄想を超えるホミンの素晴らしさをお届けします

胸キュンしたい人は是非お試し下さい

TIAMO15(東方神起ホミン小説)

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電話口で笑い声


「懐かしいな…なあ楽しかったよな?」


僕は思う


僕が感じること…僕が信じたり大切にしたいと思っていることは他の人にはどうなんだろうって


同じように感じたり大切に思うんだろうか?それとも他の人には記憶にも残らない些細な事なんだろうか…


懐かしい思い出も人によって景色が違う


同じ景色を見ても感じ方は人それぞれあるように


だからこそ自分が大切にしている思い出を共有してくれる相手がいてくれることがどんなに


どんなに大切か僕は愚かにも時々忘れてしまいそうになる…


「なあ…良かったな」


「何が?」



「お前の夢が叶って本当に…」



小さく低い声…その瞬間不覚にも


不覚にも泣きたくなるような一瞬は温かな気持ちになって広がっていく



「本当にそうだ…」


夢が叶って本当に良かった


そう思うなり頭をもたげてくる疑問


こんなに単純な答えを僕は見失っていた?


それに…


僕の夢が叶って良かったと言ってくれるその本人の夢は叶ったんだろうか…?


地元に帰って家業を継いだのは稼ぎ手がいなくなったから


それでも本人はまあいつかは継ぐと思ってたし、と飄々と


継げる家業があるだけ有り難いよと



それでも僕は覚えている


望みさえすれば何でも叶うと思っていた時代に掲げた夢


その夢を今は酒が入った時の笑い話にして…



望んで努力すれば誰でも必ず報われる


今は無理でも必ずと信じていた確信はもう心もとない


努力や想いだけでは届かない何かがあることに僕はもう気付いてしまった


そうやって残酷な時の流れや運命の悪戯に翻弄されながらも僕たちは前に進まなくてはならない…


物思いの中遠く耳に響く声


「最近のお前が悩んでるのは知ってる。兵役やなんだかんだ先の事だって俺たちにはわからないくらい複雑なんだろうけど…でも何があったってお前には才能があるんだし努力する気概もまだ消えるには早いだろう?」


「…才能なんてないよ」


「じゃあなおさらじゃないか?才能もないのに10年も生き馬の目を抜くような世界でやってきたんだろ?」


僕は思わずの苦笑



「そんなところじゃないよ…それに10年やってこれたからって…」


「何言ってんだ世話のやける奴だな!…こう言ってやる俺たちみたいな友達もいるし第一…」


と言葉に詰まるのを聞き逃せない


「第一なんだよ」


「いやどうかな」


言葉を濁すのに焦れた口調で


「さっさと言えって」


「俺が電話したろ?帰ってくるのかって…あれ本当は頼まれてたんだ」


「え…」


と返すと弁解口調


「言っとくけど忘れてたわけじゃないからな…ちゃんと覚えてはいたけどお前から何も言ってこないから帰って来ないもんだと思ってまあ…忙しいんだろうから」


僕はただ話を聞いていた


「そしたらチャンミンから電話があってお前を無理矢理でも誘ってくれって。自分では駄目だからとにかく故郷に帰って話あうなり殴りあうなりしてこれ以上…これ以上お前をギャンブルに逃避させないでくれって」



答える僕の言葉は失われた


頭の中が真っ白になって響き始めるチャンミンの声


〈僕がどんな思いで…〉


面と向かって駄目出ししても陰で僕のダメージになることをチャンミンは決して言わないだろう


僕の友達に僕の状態を告げるのだって…


「実際こっちも驚いて…なんせ凄い剣幕だったし相当…なあ?…お前恵まれてるぞ本当に」


相づちをうつのも忘れて呆けてしまい大丈夫か?の問いかけに慌てて答える


「もちろん大丈夫だよ」


「有り難く思ってやれよ…なあ近いうちに今度飲もう。皆で集まって…」



ああ、と僕は相槌を打つのがやっと…



「そうだ…今度は皆でホス公園で集まらないか?」


意外な提案に思わず上がる語尾


「ホス公園で?」



「そうだよ!こないだはちょっと柄でもないとこ行ってケチついただろ…だから原点に帰ってみるのはどうだ?」



「そうだな…」



なんて呟きながらも段々と甦る記憶に緩む口元がやがて微笑に変わっていく



僕達がただの子供でまだ何者でもなく


肩書きも立場も無く皆に会うのに理由もいらなかった


ただそこに行けば誰かがいて…そうすればもて余す時間はいつでも楽しい時に変わっていた


ポケットにわずかな小銭と夢しか持たずにそれでもあれは僕達の輝ける日


黄金の日々だった……




懐かしさに耽溺していると耳元に変わらない声


「前回ちょっとあれだったけどな…今度は」


な、と呼ばれる声に漏れる笑みに重なるように



「今度は俺たち流で行こうぜ…!」







長い電話が終わって


急にがらんとしたような部屋で感じる寒さが頭の中の興奮を少しだけ和らげる


立ち上がりうろうろと歩き回ってようやくもとの椅子に座って頭をたれた




〈夢が叶って良かったな〉


〈僕がどんな思いで…〉



僕は危ない…本当に危なかった


すんでのところで本当に大切な存在を失うところだったのにどうしてあんなに耳を防いで何も見ずにいられたのだろう?


喪失の辛さは僕が一番…他ならぬ僕が一番知っているというのに…!


かつての記憶かつての想いかつての僕が魂の底から願って


そうして叶わなかった祈り



僕とチャンミンが半身を失いぼろぼろになりながらも手探りで進んできた険しい道を


道筋は違えど同じように歩んでいるだろう全ての…



僕は泣いた…心の中で


全ての夢、全ての叶わなかった祈りのために



〈僕は歌手になりたい…いや絶対になるんだ〉


〈じゃあ俺はサッカー選手な〉


〈じゃあ俺は…〉


語る夢がまだ汚れなく純粋で恐れを知らないような


そこから一つずつ叶えた目標は全て自分の努力と汗と涙の結晶だと内心自負してきた心


今まで易々と手に入れたものなど一つもない、と


それでもどんなに努力しても叶わない願いがあった


でもそれは仕方のないこと


悲しいけれど僕はもうそう思えるくらい大人になってしまった…はずなのに


あきらめの悪い僕の心


本当に大切な物は僕には少しだけ


家族と友達と…そしてチャンミンだけだ


豪華なステージは要らない…それが道端であろうがどこであろうが構わない


ファンだって…もちろん大切だし感謝しているけど僕は例え観客が誰もいなくたって歌うし踊るだろう


家も車も手に入れた物も全て


全て失われたとしても…と心の奥底でわかってはいても


時折酷く僕は恐くなる


本当に大切な物はもっと少しだと思っていたって


失うことが怖い…


今いる場所も手に入れた全ても大変だけど快適な生活も何もかも


僕は怖い…


失って…忘れられてしまうかもしれないのが


段々と人の口にのぼらなくなって大切な思い出すら色あせていくのを身近に感じながら


次々に現れる新しい顔に過去の自分を重ねてしまう


歌う声はやがて枯れる…今ですら限界を迎えている身体は言うに及ばず…


どんなに頑張ってもどんなに努力してもやがて来るだろうその日が


一瞬ならいい…でも残酷なほどゆっくりとやって来るんだとしたら


そんなゆっくりとした凋落に僕は耐えられるだろうか


そうしてその時には僕には何が残るんだろうか…?



どうしてか子供の頃簡単だった事が大人になって段々難しくなる


未来をただ信じること


友達を作るのも何も考えずに眠るのも素直にただ謝ることも毎日新鮮な気持ちで目覚めることも


今の僕には難しい…難しい時があるけど


それでも…


忘れていた記憶が今は鮮やかに甦って口元を緩めた

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