TIAMO2(東方神起ホミン小説)
大概の所業は後でつけが廻ってくる
犯罪だってなんだって大きなものから日常の些細なものまで
酒を飲みすぎれば二日酔いになるし食べ過ぎれば浮腫んだ顔で何千人…何万人の視線に晒されるはめになる
そして昨日の僕みたいに面倒くさがってソファーで眠ってしまったら
…日付が変わっていたからもう今日か
なんてどうでもいい事でも考えて意識をそらさないと固まってガチガチの全身が壊れた機械みたい
油を射さずに酷使した機械みたいにきしんだ嫌な感覚
ゆっくりとストレッチをしてこわばった身体をほぐしていく
目覚めて2秒で飛び起きてなんの問題もなかった頃が懐かしい
なんて思考の隙間に忍びこんできた疑問にいつの間にか侵食されていく心
あと何年同じレベルのパフォーマンスが出来るんだろう?
考えずにはいられない問題
どんな日もずっとレッスンをしてきてこれからもそうだとしたって限界はある
新しい振り付け師…世界的に有名なトニーテスタさん…の難易度のずば抜けた振り付けをこなすには並外れた努力ですらまだ足りない
それぞれが限界まで努力してなおぴったり息が合わなければ大怪我につながりかねないギリギリのパフォーマンス
〈まるでミュージカルを見ているようだ〉
そんな風に話題になるのは嬉しいし当のトニーからも今この振り付けを踊れるのは君たちしかいないなんてお世辞にでも言われたり
これ以上は絶対無理と思っても次の作品でそれを軽く越えるパフォーマンスを要求されたって頑張るしどんな努力だってするけどでも
それにしたって限度があるだろう
あと何年…?
そして2年のブランクがあるとしたら…?
ストレッチの動きを止めて立ち上がる
早起きの僕にようやく追い付いてきた太陽が途端に眩しく照りつけ始め雑多な部屋の様子を浮き彫りにする
チャンミンと住んでいた頃は家政婦さんに来てもらっていたけど1人になってからは少し自分で頑張ってみよう…なんて思ってもこの体たらく
だいたい逆だ…チャンミンといた時には僕も僕なりに気をつけていたし
(あくまでも僕なりに、だ)
何よりもチャンミンの方が焦れてリビンクはいつも綺麗…僕の部屋も文句を言いながらも片付けてくれていた
とあるテレビ番組
これはなんでしょう?の質問が実は僕へのサービス問題だったのに
僕はわからずチャンミンの方がすぐ
ユノの部屋(の本棚!)
なんて当ててしまって
〈なんでチャンミンさんの方がユノさんの部屋に詳しいんですか〉
なんて司会者の本気のあきれ顔…その意味するところに気付いたらしく一瞬青くなったチャンミンの顔
間髪入れずにアシストを入れた
〈二人で住んでいればそんなこともありますよ。実は僕が部屋を汚すんで…チャンミンがたまに片付けてくれるんです〉
会場からどっと歓声
能面みたいなチャンミンの表情が瞬間崩れて
まっすぐ伸ばされた硬い背中がほんのわずかに吐く息とともに弛緩した
…懐かしい思い出から急に我にかえる
ため息をつきながら時計を見るともうシャワーを浴びてギリギリの時間しか残らない
ちょっと急ぎ足でバスルームに駆け込んだ
ドラマの撮影の前に入っている打ち合わせはまた単独の仕事のもので
久々に会えるなんて勘違いしていた分落胆は大きい
「そうだっけ…香港のテレビの打ち合わせだって思ってた」
だからチャンミンに会えると思って………と口には出さない言葉の恨めしさ
「…それは来週ですよ」
「ああそう…」
告げられた移動車の中で適当な生返事をして何でもないふり…本当はかなりこたえたけど…そんな素振りを見せないようにこらえてしまうのがもう癖になっている
「昨日そうお伝えしてませんでしたか?」
マネージャーの返事に慌てて頷いた
「聞いてたけど忘れちゃってたみたい…別になんだっていいけど」
そう言ってシートに身を預けて頭の中でまた始まるカウントダウン
18…違う19日と…と考えて
〈…止めた止めた馬鹿らしい〉
目を閉じてもあれこれと雑念が渦巻いて穏やかじゃない
イヤホンをつけてシャットアウトした
事務所に行き部屋に入ると近々発売される僕達の写真集が平積みされていて
ちょっと…なんてパラパラとめくっていたのを入ってきたマネージャーに見られてなんだか内心ちょっと恥ずかしい
「ああそれサインをして頂く分で…」
僕がリクエストしたドリンクを手渡しながらの爆弾発言
「さっきチャンミンさんも書いていかれましたから」
耳にする名前に揺れる心
名前を聞いただけで…
「…そうなの?」
マジックを手に取って回したり振ったり落ち着きのない手遊び
聞きたくてしょうがない質問をどう切り出そうか悩んでいると
「ついさっきまでいたそうなんで入れ違いになったみたいですね」
ふーん、と惰性で気の無い返事を返してから急に言葉の意味を理解して詰め寄った
「さっきまで?さっきまでチャンミンいたの?」
「そうらしいですよ」
おもむろに席を立とうとして座っていた椅子が大きく音を立てて揺れた
咄嗟の行動で驚いた相手の顔を見て慌てて我にかえる
なにやってるんだ?これから仕事だってのに
「どうしたんですか」
「いや別に…ちょっとトイレ」
呟きながら立ち上がり
「約束までどのくらいなんだっけ?」
振りかえると後もう10分くらいですよ、の声を背中で聞きながら
怪訝な顔をされない程度の早足で部屋を飛び出した