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東方神起  ホミン小説

現実が軽く妄想を超えるホミンの素晴らしさをお届けします

胸キュンしたい人は是非お試し下さい

TENSE10(東方神起ホミン小説)

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沈黙には二種類あると僕は思う


穏やかな暖かい…例えば春の日差しのようなそれと少しでも動けばその場の空気さえ粉々になってしまうような緊張を含んだそれが


ずいぶん昔僕はヒョンと二人きりになるのが怖かった


沈黙に陥らない為に馬鹿みたいに喋りまくったり反対にもう一切の気配を消したように黙りこくったり


ヒョンは全然気にしていないよう…いつも泰然として見えた


はしゃぎすぎたり熱くなったり…ステージのヒョンはそんなイメージが強いけど実際はちょっと違う


寡黙に自分の世界に引きこもっていることももちろんあってそんな時のヒョンが僕は怖かった


ステージと違う…皆でいた時には見えなかったヒョンの姿を見てしまうのが


今なら何故怖かったのか解る理由を最初は頭から否定して考えないように…何度も打ち消して拒否してきた想い


ヒョンを知るのが怖かった


一つ知ればもっと…また一つと際限なく沸き上がる感情の名前を恐れながらも止めることは出来ない


沈黙が苦痛でなくなって自然になりやがてそれは喜びになった


二人でいて…何も話さなくてもただそばにいるだけで


それだけで僕には良かったはずなのに


「チャンミン?」


ヒョンの手が頭をかすめた


「何考えてる?」


「…別に何も」


素っ気ない返事を取り繕うように顔をあげると何だかちょっと考えているようで

目で問いかけると小さな声


「…お願いがあるんだけど」


僕は思わず苦笑した


「ヒョンのお願いはもう嫌ですよ。なんですかまた隠し事ですか?」


僕の言葉にちょっと起き上がって


「違うよ」

「また追い払おうったって…」


首を振りながらの反論


「だから違うって。お願いっていうのは…」


何です?と耳を傾けた







「全くなんでこんなとこきたいんですかね」


振り返ると松葉杖をついたヒョンがゆっくりとついてくるのを確認しながら歩調を緩めた


簡単そうに見えてもやっぱり松葉杖をつきながらの移動は見るからに大変そうで

うっかりお願いなんてのに乗ってしまったのをちょっと後悔


「1日中部屋にいてみろよ…おまけにマネージャーも両親も廊下出ただけでなんかいやな顔するし」


「…それだけ心配してるんですよ」


…僕だってそうなんだけど


そんな考えを悟られたのか幾分慌てた様子でもちろん有難いけどさ、と付け加えた


〈屋上に連れて行って〉


そう言われても思わず聞きかえすことは無かった


練習生の頃一人になりたいと手頃な部屋に入って鍵をかけてこもってしまう僕の癖…それに対してよくヒョンは屋上に上がっていた


もっとも理由は知らない…僕のように一人になりたいのかそれとも風にあたりたいのか、ただ高いところが好きなだけなのか聞いたことは無い



寄宿舎が新しくなった時皆は喜んだけどヒョンは屋上が無いのを一人で嘆いたりしていた…


当時は気にも止めていなかったそんな記憶が不意に浮かぶ


屋上のドアの前まで来てしばらくヒョンを振り返って待ちながら試しにドアノブに手をかけると簡単に空いてしまって


不用心だな、と思わず口をついた


「まだ時々物干しに使ってるんだって」


「なんでそんなこと」


知ってるのかなんて愚問を呑み込んだ


人懐こいヒョンのこと…どうせ看護婦さんあたりに聞いたんだろう


先に中に入り背中でドアを押さえてヒョンが通るのを待つとありがとうなんて言って笑顔で


ゆっくりと歩く背中を見守りながらついて行く


余り使われていないような物干し竿を眺めやると


「今はほとんど業者に頼むか乾燥機なんだって」


「まあそうでしょうね」


「天日干しの方が気持ちいいのにな」


曖昧に返事をしながら屋上の端で景色を眺めているヒョンの横に並ぶ…と反対に並ぶように顎で指図された


ポケットに手を入れて煙草を取り出しゆっくりと火をつけて


僕と反対の方へたなびき始める煙を見て位置がえの訳を知る


ヒョンが煙草を吸うのを見るのは本当に久しぶり…



まだ二人で暮らしていた頃


朝起きるとヒョンがリビングでぼんやり煙草を吸っていて

挨拶しようとしたら少し風邪気味だったせいか軽く咳き込んでしまった


振り返って挨拶してきたヒョンが一瞬驚いたような顔をしたけどちょっと風邪気味で…と言う僕の言葉に頷くと

もう一度ゆっくりと一服してから煙草を揉み消して



それから二度と僕の前で煙草を吸わなくなった



それに気付いて何度かそれとなく水を向けてもいつもかわされる台詞


〈今は吸いたくないから〉


〈僕は歌手だから…喉を大切にしようと思って〉


〈ちょっと煙草切らしてて…〉


本当はヒョンに喫煙を止めて欲しかったからこれ幸いとすぐに問いただすのを止めてしまって


僕の前では吸わないのがもう当たり前になっていたのに



一言も発せずに景色を眺めながらひどくゆっくりと時間をかけて煙草を吸うヒョンの姿を見て何となく気付いてしまうある事実


あの記事にヒョンは怒っていない訳じゃなかった


怒って憤り地獄のような怒りを感じていたのにも関わらずそれを見せなかっただけなんだろう


僕のため…僕の怒りをなだめるために


そう思うと途端に解けていくパズルのようなヒョンの言葉や態度


ヒョンの横顔…鼻梁の整った綺麗な横顔を眺めながら静かに芽生える疑問


ヒョンは一体どれだけ


今まで一体どれだけ僕のために優しい嘘をついてきたんだろう?


〈大丈夫大丈夫〉


二人で活動するようになってから必ず舞台の直前や何かと気後れする僕にかけてくれる魔法の言葉


ヒョンの方が大変なはずだとわかっていてもいつも僕はこの言葉をヒョンに言わせてしまう


やれ寝不足だ、調子が出ない、体調が悪い…

もっと練習すれば良かった、練習しすぎてわからなくなった

時間が足りなかった、時間がありすぎた…


幾千もの言い訳と失敗への防御



そんな僕の甘えにいつも答えてくれる声


〈大丈夫大丈夫…〉


〈チャンミンは大丈夫だよ〉


ヒョンの描く夢…夢のような世界


〈夢で思い描けることは全部実現可能なんだよ〉


そう言って夢を現実にしてしまうヒョンの言葉を僕はただ信じてこれたけど


ヒョンが僕に夢を見せてくれるならヒョンには一体誰が夢を見せてあげれるんだろう?


誰がヒョンに大丈夫だって…


と思った瞬間思わず口走っていた


「ヒョンは大丈夫ですよ」


小さくなった煙草をくわえながら僕を見る怪訝な顔


深く息をはいて名残惜しそうに火を消すと何?と向けてくる視線


咄嗟に返事が出来ずに冗談混じり


「…僕の前でも煙草を吸って大丈夫ってことです」


そう返すと笑いながらそうか…なんて言うわりにまた吸う素振りは見せなかった


また景色に目をやるヒョンにつられて目を向けるといつの間にか赤く染まり始めた空が美しい


茜差す街並みには何故か郷愁の念がある


どこにいても帰りたいと思うみたいな不思議な感覚に囚われて物悲しいような気持ち


「チヤンミナ」


「はい?」


前を眺めながらのヒョンの呟き


「僕は大丈夫かな?」


ヒョンの言葉に心臓を掴まれる


「ヒョンは大丈夫ですよ…何があってもどこに行っても絶対大丈夫です…僕が保証しますから!」


勢いこんだ言葉に満足したように微笑みを浮かべて


ありがとう、と無言で伝えてくる眼差しのやわらかさ


その刹那衝動的に沸き上がる感情


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