東方神起ホミン小説 東方lovers

東方神起  ホミン小説

現実が軽く妄想を超えるホミンの素晴らしさをお届けします

胸キュンしたい人は是非お試し下さい

TIAMO18(東方神起ホミン小説)  完結

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鈍い身体の痛みに引きずられるように目を覚ます


段々とはっきりする意識の中で混乱する記憶にこめかみに当てた指を強く押し付けながらぼんやりと


長い回想…霧に包まれたような頭にやっと追い付いてくる現実


ドラマの撮影のあとチャンミンに電話して…?


組んだ腕の下敷きになってしまっていた写真集を慌てて…よれてしまったページにため息をもらした


〈これのせいだな〉


長い夢のような回想からいつの間にかついた眠り


その途端にはっとして時間を確かめ…時計を見てテレビまでつけてやっと胸を撫で下ろした


写真集を閉じて記憶の底に急速に消えていく回想の微かな名残りに思いをはせる


あれからもう一年も…


色々な事があった…ありすぎて終わった事の全てを思い出すことすら難しい


あんな風に決死の告白をしたわりに今でも僕はチャンミンに嘘…というかすぐに大丈夫だよなんて言ってしまって


心配顔のチャンミンを見てごめんなんて思うけどなぜだかちょっとだけ嬉しかったり


だって僕はもうわかってしまった


僕が本当に心の底から悩んだり怖かったりする時にはいつもすぐそばにチャンミンがいてくれて


僕を存分に慰めて甘やかして…そしてやがて傷の癒えるころ


その時は有無を言わせずに叱咤激励して送りだしてくれるだろう…



あれから迎えた10周年のイベントや記念のアルバム


歌番組で一位をとって…紙吹雪の中競演者からの口々のお祝いの挨拶も司会者の言葉もファンの声援すら聞こえずに


日頃の冷静さを破って大きく破顔したチャンミンの嬉しそうな顔



流れ出す曲のイントロの中でファンへの感謝…やらなきゃならない段取りも全て消してしまうみたいなチャンミンの笑顔



チャンミンの笑顔…



単純に曲が売れれば嬉しいわけじゃない


でもこの曲…今回のアルバムや活動はコンセプトもパフォーマンス的にも僕達が重ねてきた時間の結晶を象徴するものだったから


喜びもひとしお…さらに上がったハードルに思いを馳せるのはまだ先の話だ


僕達の記録を破るのは他ならぬ僕達だと…



それなのに大成功に終わった曲に続けて出した曲の活動中僕はあろうことか怪我なんてしてしまって


本当に…でももうこれですら終わった話


〈何で夜中に練習なんか〉


しかも御披露目前でもなくもう何回か踊っているのに


様々な憶測


僕はいつもそう…ちょっと不安だった…納得がいかなかった…その全部が当たっているようでまるで違う


僕はただ


チャンミンの笑顔が見たかった


前の曲で一位を取った時に見せたチャンミンの笑顔をもう一度


それでちょっと張り切ってなんて誰にも…当の本人にさえ言えるはずがなかった




隠している真実や口には出さない言葉も近頃のチャンミンにはもうお見通しみたい


10年前には考えられなかった僕達の関係


毎日あきもせず降りかかる問題や小さな衝突も僕達にはもう些細なことだと


9年前には知らなかった


8年前でも7年前でも駄目だ…10年という長い月日が僕達の間に紛れもない何かを残して


その何かを簡単に言葉には出来ない


信頼?もちろん

絆?当たり前だ

友情、家族、半身その全て


そしてもちろん愛が


身体からも感情からも溢れ出るほどの愛が…




そうして僕は思いしる


残酷に思えることもある時間の流れ


でも時には同じ時間が素晴らしい何かを作り出すことができるんだと


時間だけが時には…




朝の光の中で


眩しさに慣れない目もやがて歓迎する光と暖かさ


これからくる冬に備えて色とりどりの鮮やかな街路樹はやがてその美しさを風に舞わせ足元に敷き詰める


小さな死…身を潜めて静かに春を待つんだろう


もう一度生きるために



窓から眺める季節の移り変わりは人の心に似て


凍てつく冬も心踊る春も情熱的な夏の日…


誰もが少しだけ人恋しくて物悲しくなってしまう秋の風が吹いたから


朝っぱらからの電話もチャンミンは許してくれるだろう


だってもう18…19日も会ってない…20日だったかな?


電話をして文句を言おう…


何で会いにこないんだって


前のドラマの時には来たのに何でだって言っちゃおう


寝起きであんまり機嫌の良くないチャンミンはきっとちょっとめんどくさそうな口調にテンション


でも構うことない…どうせ僕の冗談めかした懇願に笑ってしまう


文句を言って行けない理由を山ほど挙げてから頭の中で必死にスケジュール調整してしまうチャンミンが目に見えるよう


朝の日課…コーヒーの香りに包まれながら僕の声に耳を傾ける


少し前から飼い始めた犬の様子も忘れずに聞いてペット自慢するチャンミンの声を楽しもう


だって少しでも長く声が聞きたい


楽しそうに明るく笑うチャンミンの声が聞きたいんだって…



長い電話を切る頃にはきっと微笑んでいるだろう


会えない毎日…そうやって一日の始まりに僕の事を考えて欲しい


仕事の合間ふとした折に


眠りにつく前ほんの一瞬、今日もいい日だったと思いながら…でもやっぱり違うと否定して欲しい


1人でどんないい仕事をしてどんないい事があったとしても


僕に会えなかった日をチャンミンの完璧な日にして欲しくない


そんな我が儘で贅沢な感情ですらまだ


まだ足りない僕の…




窓の外を眺めて


夏よりも少し寝坊した秋の太陽の柔らかな光の中で


ゆっくり思いを馳せる時間の余裕は本当は無いんだけど…でも少しだけ


爽やかな小春日和になりそうな予感


ちょっと寝不足だし相変わらず体のあちこちが痛むけど全然問題ない


いい日になるだろう…きっと撮影も上手くいって満足出来るはず


それにもしかしたらこれからの電話でチャンミンが今日すぐに来ちゃうなんて事になるかもしれない…



朝の光を堪能しながら


電話を取り上げて呼び出す名前すら愛しく眺めて


永遠に感じる呼び出し音に胸を踊らせながらチャンミンの声を待つ


じっとしてられなくてウロウロと歩きながら


…本当はもうシャワーを浴びてもう一度台本を読むなりなんなりしないと


そうやって頭の中で数えるやらなきゃならないことの全て


…全てが



聞こえてきたチャンミンの声の前に消えていく


「ヒョン?」


予想通り少しかすれた怪訝そうな声



我知らず浮かぶ笑みに気付いてなおのこと頬を緩ませて



「チャンミナ」




また新たな一日が始まった













終わり


TIAMO17(東方神起ホミン小説)

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僕の部屋に入るなりなんだか急に大人しくなったチャンミンにソファーを進めても所在なさげ


「何か飲む?」


と聞くとほっとしたように立ち上がりキッチンに顔を見せた


「ワインなんて無いですよね」


どうだったかな、と答えながらもあるはずないのは僕もチャンミンもよく分かっていた


「いい大人の男は自分が飲まなくてもワインくらい置いとくもんですよ」


なんて言いながら冷蔵庫を覗いて


「ビールもないんですか?」


なんて言うのに苦笑した



だってこないだ…もう大分前になるかもだけど…家にあったワインもビールもみんな飲んでしまったのはお前だろうとか


言わないけど思ったりして



「ワインとビールね…買っておくよ今度来るときまでに」


というと冷たく


「別にいいです。今度なんてあるかどうかわからないし」


「…そんなこと言うなよ」


言いながらこちらを見ず冷蔵庫を覗いているチャンミンの背中越しに覗きこもうと…すると急に振り返りペットボトルを押し付けて逃げるようにリビングに向かう背中




…緊張しているんだな



リビングに行くとソファーの横でさりげなく


僕の来るのを待っている



そ知らぬ顔をして先に座り隣を叩くと嫌な顔をしてみせて一番離れた隅に座るのを見守って



そして…僕は話し始めた



今回の事…兵役のことやそれに伴うブランク


インタビューで兵役やそれにまつわる事について話してもあくまでもそれはその事について一般論で話したのであって


僕の心の奥底の気持ちまでは話せた訳じゃない


当たり前だ…どれ程深く正直に話そうとしたってアイドルのユノ・ユンホとして話すなら限界があって然るべきなんだろう


でも舞台を離れて


こうしてチャンミンと二人きりになってさえ


認めるのが怖い感情


長い…長すぎる間自分でも認めずにきた感情


いつもの前向きなポジティブな意見じゃなく自分の中の弱いところや怖れを…




〈僕は怖い〉


そう切り出すと注がれる視線に少しうつむいて祈るように組まれた自分の手をじっと眺めた




〈僕は怖いよ…兵役に行くのも…その間活動出来ないのも〉



〈今だって…若くて新しいグループが沢山出てきて皆やる気満々で…〉



そして皆才能と自信に満ちあふれているように見える


何よりも情熱が


疲れを知らない子供のような勢い勝りのそれでも…紛れもない情熱が…



かつては僕達もそうだった


僕だってかつては…


その熱が失われるなんて考えた事すら無かった


休養を余儀なくされた2年近くの間


どれほど渇望してやっと帰ってきたはずの世界すら時折奇妙に色を無くしてしまう


自分のしていることが過去の自分の出来の悪い模倣のように感じられて僕の中でまだ消えずに残る情熱に水を差す



これでもしまた2年もの間


そうして頭の中で膨らんでいく疑問



…声は出るんだろうか?


複雑な振り付け…ダンスを覚えている?


今でさえ満身創痍の身体…怪我をしないだろうか?


何よりも…そうやって気をもんで指折り数えて迎えたその日に


僕が帰ってくる場所はあるんだろうか…?



僕は怖い…本当に怖かった


誰が出て来ようとどんなグループが売れようと本当は関係ない


問題は僕の心…僕の魂が


2年過ぎた後でもうひとかけらの情熱も残っていなかったら?



そしてどんな疑問より遥かに深く突き刺さる1つの疑問



もしチャンミンが



チャンミンが別の可能性を見つけてしまったら?



離れている間…僕といる以外の可能性を…




〈ヒョン…?〉



促されてまた…絞り出すような言葉は声にならない



自分の弱さを認めるのはまだいい…でも抱いている疑問


自分達の未來や世界に僕がほんの少しでも疑問を抱いているとは言えない


他の誰にも…ましてやチャンミンには



今こうしている間にも僕の側にいてくれる…さっきまでいつもより少し他人行儀だった顔が僕の独白に急に真剣な面持ちになって


心配そうに見つめてくる瞳



…遠い記憶のあの日と同じ



再起を誓った…お互い口には出さなくてもわかっている言葉を確かめるように



〈これから二人で…〉


守り抜こうと誓った名前



僕の言葉にチャンミンは静かに頷いた



その時僕は誓ったはずだ



チャンミンには明るい未來だけを信じてもらおう


普段僕より懐疑的で厭世的なチャンミンでも


僕が大丈夫だって言ったら本当に大丈夫になるんだって信じさせるために僕は何でもしてみせる


そのためにどんな嘘をついたって構わない


悪魔とだって取引してみせるだろうって



だって僕は約束したんだから


チャンミンを必ず


いつか必ず誰も見たことのない高みに連れていくって僕は…



黙ってしまった僕を見つめるチャンミンに笑いかけるとその途端何故だか顔を歪めて横をむいてしまった



「話したらすっきりした…もう大丈夫だよ」



僕の言葉にチャンミンが微かに身じろきするのがわかる


話しかけようとすると頭を横にふりはじめた



「そんな話…そんな話が聞きたいんじゃない。ヒョンがいつもみたいに大丈夫なんて言うのを聞きたいんじゃないんです」



「チャンミナ…」



「ヒョンはいつもおとぎ話みたいな未来を僕に信じさせてくれますよね?いつも明るい未来を描いて…ヒョンが言うなら本当にそうなるかもって僕ですら…この僕ですら思ってしまうくらい」



「チャン…」と言いかけた言葉さえ飲み込んでしまうくらい食い入るような眼差しで



「そうやって無理して…だから今回みたいな事になるんだとしたら…」



「違うよ」



間髪入れずに遮ると真意を確かめるようにこちらを凝視する



「それは違う。それにもうあんな風にギャンブルに溺れてしまう事は絶対に無い…これは誓えるよ」


しばしの沈黙のあとややあってから僕の断定を噛み締めるみたいに


「…絶対に?もう…もう2度と行かない?」



その言葉は僕を苦笑させた


「誰も行かないなんて言ってないだろ。でもたとえカジノに行ったとしたってもう大丈夫だから。適当に遊んで結果は引きずらないよ」



「ヒョン」



「絶対に大丈夫だから」



そう言うと深いため息



「僕は馬鹿だ」


「僕は本当に…ヒョンがこういう人だって僕が一番知っているのに」



僕の頑固さ…融通の利かなさや狡さを確かにチャンミンほど知っている人間はいないだろう



やがて唐突なチャンミンの声



「ヒョン勘違いしないで。感謝してない訳じゃない…ヒョンが今まで僕にしてくれた事の全てに感謝してない訳じゃないんです」



「ヒョンがいつも自分1人で答えを出してしまうのもすぐに大丈夫だって言ってしまうのも僕の為だって本当はわかってる。でも」



「僕はもうマンネじゃない。ヒョンが守ってあげなくちゃならない子供じゃないんです」


そう言って真っ直ぐ僕を見た



その瞬間…その瞬間の気持ちをどう例えればいいんだろう



いずれにせよチャンミンの言葉は天啓のように僕の心臓を貫いて


そうして恐る恐る僕の口を開かせた



〈僕は……〉



〈僕は本当に……〉




言葉につかえながら途切れ途切れ話す僕をチャンミンは少し厳しい顔をして見つめていた


慣れた感情…慣れた防備を全てかなぐり捨てることは難しい…


話したい事の百分の一も話せたかどうかわからないけど今の僕にはそれで精一杯


僕には大きな一歩だった


喉のつかえを咳払いしてまた言葉を探していると穏やかな制止


「ヒョン…今日はもうそのくらいで」


顔を上げると少し震えたような唇がそれでも微笑んで


「…疲れたでしょう?」


優しい言葉に曖昧に頷くと


「…ヒョンにも人間らしい感情があるのがわかって良かったですよ」


「そんな…」


と言いかけると被せるように


「いいですか誰も…どんな人間でも誰も弱いところや怖れ無しではいられないんですよ。ヒョンはいつもそんなもの無いみたいに振る舞っているけど」


そんなこと無いよ、と弱々しく否定すると


「勘違いしないで…悪い意味じゃないんです。僕はいつもそういうヒョンを凄いと思うし助けられてもいるんですから。でも…」


「でも時々思うんです。あんまり強くなりすぎないでって…1人でも平気みたいにあんまり強くならないで欲しいって…」


見つめてくるチャンミンの瞳が怖いくらいに…



「それに…ヒョンはどうしますか?僕より若くて可愛くて性格も良い子が来たらもう僕の事なんてどうでもいい?」



「馬鹿なこと言うなよ」



間髪入れずに否定すると薄く笑いながらも少し堅い声



「馬鹿なことですか?」


「当たり前だろ」


「どうして?」


「どうしてって…」


だってどんなに若くて可愛くて性格も良くたってそれはチャンミンじゃない


チャンミンじゃないんだもの…と


言いかけた言葉が目の前のチャンミンの姿に溶けていく



「もうわかりましたよね」


「…チャンミン」



「僕だってヒョンと同じ…ヒョンより若くて可愛くてかっこよくてずっと素敵でどんなに素晴らしい人間が現れたってその人はヒョンじゃない」



怖いくらいの口調と眼差し


「そしてヒョンじゃないなら僕にはもう理由が無い」



そう言いながらソファーの端から立ち上がって段々と近づいてくるチャンミンに視線はおろか体まで釘付けになってもう僕は動けない



「僕がこうやって側に行く理由も無い…ヒョンじゃないなら」


一歩一歩近付いて体が触れ合うくらいの距離


息がかかるくらいに近く…



いつもの僕達の距離はいつの間にかこんなに近づいて


そんな改めて気付かされる事実に今さらながらの驚嘆


何よりもチャンミンの言葉が…見つめてくる瞳が


「 どんなに完璧などんなに素晴らしい人間が現れたって僕が隣にいたいのは…」



そうやってすぐ隣


「それがステージでも何処でも隣にいて欲しいのは…」



そう言ってなんだかちょっと強引に僕の隣に腕を組んで座り込んだチャンミンの今更ながらの赤面につい笑みを誘われて


そんな僕を見て憮然とした表情



「…笑わないで下さい」



なんて言うのにまた広がる笑みがほんの一時の安らぎをもたらした



「ヒョン」



暫くして気だるい沈黙の中で囁くような細い声



「僕達がこの10年やって来て…その事になんの意味も無くて誰も何も気にもとめてないにしたって」



「やめたい時もあった…疑問だらけでただ追われるみたいに毎日を過ごしたり…ようやく楽しめるようになった時にあんな…あんな事になって」


言葉を詰まらせるチャンミンに思わず走らせる視線の先で大丈夫、というように
片手を挙げていつになく急いた口調で



「でも僕達が信じてやって来た事は誰にも否定できない…そこに何か(something)があるって…僕達にしか生み出すことの出来ない何かがあるって」



「チャンミン…」



「僕達より歌が上手くてダンスも上手でルックスも性格も何もかも全部優れている人間が現れたって関係ない…僕達には何かがある…長い時間を経てやっとわかる何かがあるって」



そう言って僕を見た



「そう僕に信じさせてくれたのはヒョンなんですよ」



口を開こうとして…言葉が出ない



いつも饒舌な僕がこういう肝心な時には言葉を失ってしまって



壇上で挨拶したりそんな時には勝手に口から出てくる言葉が何故か言えずに相手を失望させてしまう



僕は嫌なのに…


チャンミンを失望させてしまうことが僕は本当に…



と思っていると突然手を伸ばして僕の胸に当ててきたので僕はもう驚いて…



「何をどうしたってヒョンの悩みを僕が解決することは出来ない…と言うかむしろ悩んで当然なんだろうと思うし…でも」


と言って当てた手で僕の胸を軽く叩いて



「僕と離れたって…舞台を離れてしまったって」



最後に念を押すように胸に当てられた手のひら…



「ここの距離で考えて下さい…僕との距離も…ファンとの距離も」



僕の左の胸に当てられたチャンミンの手が離れるとやっと息ができる


甘い痛み…甘い余韻を残して離れてしまった綺麗な長い指をつい目で追いかけて


すぐ隣にいるのを忘れてまともに絡み合う視線


「それにヒョンが言ったんじゃないですか僕が…僕がヒョンの家だって。だったらちょっと離れたってなんだって…」




僕は目を閉じた



押し寄せる感情の嵐に耐えられない



余りにも…



やっと絞り出せた声は低くくぐもっている



悩みや恐れや何もかも全部無くなってしまったついでに僕は言葉まで失ってしまったみたい



「チャンミン」



それだけしか言葉を知らないみたいみたいにやっと出た声にチャンミンはうっすらと微笑んだ



僕は密着した体を少しずらしてチャンミンの肩に頭を乗せてしまう


と僅かにこわばるチャンミンの体からゆっくりと力が抜けていくのを幸せな気分で味わった



そうしてまた目を閉じてしまう




「ヒョンはもう充分…充分やってきたんだから」



言い聞かせるみたいなチャンミンの囁きを枕に安心しきって小さな子供に還ったみたいに



〈ヒョン…?〉



魔法の言葉、魔法の瞳に守られて僕は繭の中にいるみたい…



こんな安堵は久し振り



伝えたい感謝の言葉すらぼんやりと…




ロマンティックな事は何もおこらなかった


たった一度の口づけさえ



僕達が交わしたのはたくさんの言葉に酔いもしないグラス



そして長い抱擁



この先ずっと忘れられないような長く深い心の抱擁だった…

TIAMO16(東方神起ホミン小説)

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全ての電話が終わったのはもう予定の時刻をとうにすぎた3時間も後で


〈皆帰ったんだろう〉


マネージャーにはきっとチャンミンが上手いこと言ってくれてるに違いない…なんてゆっくりと帰り支度をしていると急に遠慮なくドアを開かれて


振り返ると表れたチャンミンの姿に驚いてしまう


呆けていると片眉を上げて


「ヒョン。済んだんですか?」


いつもより無遠慮な口調に頷くと済んだならいつまでもぐすぐずしてないで、なんて部屋の外に急き立てられて思わず馬鹿みたいに名前を呼んだ


「チャンミン」


「何です?」


長い廊下…前を見て歩きながらの背中を慌てて追いかける


「チャンミン」


相変わらずの背中に呼びかけながら


「ごめん、本当に…」


僕の言葉にも足を止めない


「チャンミン」


「もういいですから」


追い付いて並びそうになった一瞬


「…チャンミン」


もう何ですか、と振り返った顔に


言いたいはずの千もの言葉


「チャンミン」


「だから何ですかって」


苛々した様子を装っているけどそれとは何か違う…


「チャンミン」


「…名前ならもう聞き飽きました」



もういいなんて言葉の意味は?


…どうして戻ってきたの?



「チャンミン…ちゃんと」


また上がる眉の綺麗なカーブ


「ちゃんと謝りたいし話がしたい」


引き締まったままの口元



「もしお前にその気があるならなんだけど…」


と言うなりつかれた大げさなため息に落ち込む暇もなく


「本当にもう…」


と頭を振った


「だからヒョンは鈍いっていうんです…僕がわざわざ何のために戻ってきたと思ってるんですか」


その言葉にはねあがる心臓


固まって動けない僕を置いて踵を返しさっさと歩き出すのに追い付いてエレベーターの前


覗きこむ憮然とした顔が扉が開いておりてくる人影に巧みに挨拶をかわす


僕はろくに相手も見ないまま気もそぞろに頭を下げると乗り込んだエレベーターのボタンを嫌というほど押し続けてやっと二人きり


「チャンミン」


というと静かに微笑んだ…というのは僕の勘違いだろうか?


「名前ばっかり」


「え?ああごめん…」


盗み見る横顔は長めの前髪に縁取られて表情が読めずに謎めいてみえるけど


綺麗な顎のライン…口元は僅かに微笑んでいるよう


話の継ぎ穂がつかめずにエレベーターの表示がカウントダウンみたいに迫ってくるのを見守っていると


ため息と共に焦れたような


「謝りたいとか話がしたいとか言ってたくせに放置プレイですか?」


その言葉に思わず赤くなる


「違うよ。違うけど…」


振り返るとまともに目があってなおのこと


「どうぞ?続けて?」


僕は瞬間言葉を失ってしまう…だってあまりにも久し振りみたいな気がして


あまりにも久し振り…こんな風にチャンミンを見つめるのは


そうしてこんな風にチャンミンの瞳が僕を見て…


普段歌を歌っている時に僕はチャンミンを見つめてもチャンミンは僕をわざとみたいに絶対に見なかったり


見られていると思っても振り返ると噛み合わない視線をちょっと物足りないと


ソロの出番が終わって舞台裏に引っ込む寸前までモニターを見ていたようなチャンミンが僕の気配に急にあらぬ方を向いたり


かと思うと調子の良くない僕に食い入るみたいな視線
…慌てて目を背けてもわかるんだけど


ある時何で見ないの?と誰かに聞かれていて僕も興味津々


散々言葉を濁してやっと出た答えが〈恥ずかしいから〉なんて答えで


〈なんだよそれ〉


〈本当に何がだよ…今さら何が恥ずかしいって〉


責めたてる僕たちにとにかく恥ずかしいから、なんていつもと違う歯切れの悪さ


その時は爆笑したけど


でもチャンミンが正しかったみたい


チャンミンがいつもこんな風に僕を見るんだとして…


僕を見つめる瞳がこんな風だとしたら僕だって何だか


何だか照れ臭いし恥ずかしいだろうし第一


歌詞なんて全部忘れちゃいそう…


なんて催眠術にかかったみたいに棒立ちしている僕に呆れたみたいな顔を作ってからかい混じりの言葉



「ああもうヒョンの部屋にします?それとも…」



目を見開いて馬鹿みたいに呆けた僕を見て



悪戯そうに笑い出した