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東方神起  ホミン小説

現実が軽く妄想を超えるホミンの素晴らしさをお届けします

胸キュンしたい人は是非お試し下さい

TIAMO9(東方神起ホミン小説)

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焦燥感と自己嫌悪にさいなまれながら寝苦しい夜を過ごして


迎えた朝…僕だけでなく皆のテンションはやけに高すぎて急ごしらえの明るさが逆に皆の中にある不穏な空気を露呈して


そうして気付いてしまう1人足りない顔


「…ああ…あいつは先に帰ったから」


何気なさを装って言葉少なに告げられると一瞬の間



「そうなんだ…」



何事も無かったように振る舞おうとする僕の努力は一応報われたけどその反面


何とも形容のし難い不完全燃焼な後味の悪い空気を感じないわけにはいかなかった




今までどんなに疲れて大変なスケジュールの中でも会えば刺激を受けたり励まされたり


別れがたい気持ちを抱いていたはずの仲間との別れを初めて安堵して迎えてしまい


その事に気付いて愕然と…しない自分に愕然としてしまう


今だって年に何回会えるかくらいだから多少ギクシャクしても仕方ない…なんて考えてしまう自分が心底


心の底から悲しいはずなのに何故かもやに包まれたように何も感じない心


デビューして僕がアイドルになって…人気が出ようがバッシングされようが何があったって変わらないようだった僕達の関係…


ボンヤリとした頭で何気ない会話を交わしているうちに目的地に着いて



肩を叩かれ口々にまたな、なんて言葉を交わしあってはいるけど次の約束もないあっさりした別れの儀式


それぞれが帰途に付く一瞬


オーバーラップする昔の光景


帰路につく道すがら別れ道でもう一度名残惜しく後ろ姿に名前を呼んで手を振って


大きく破顔した相手に負けない笑顔を返してやっと歩き出したかつての日々が鮮やかに甦って



皆を大声で呼び止めてしまいたい衝動にかられたほんの一瞬はすぐに消え失せてしまった



向けられた背中を眺めながら踵をかえそうとした瞬間ちら、と振り返った1人の顔に浮かぶ苦笑


大きく振ろうと肩まで上げた手をバッグのショルダーにやって誤魔化すと


〈またな〉と声に出さずに答えて小さく手を上げた



うなずいて手を上げた姿が人混みに隠れてしまうのを見送ってやっと


僕の回りに目深に被った帽子を掻い潜って好奇な視線と人垣が出来てしまっているのに気付く


向けられたスマホのカメラや視線ににこやかに挨拶しながら足早にその場を離れた






何があったって否応なくやってくる毎日は嫌な記憶を薄れさせてくれるけどそれでも時々鮮明に甦って鈍い痛みを残す


忘れようと努力すればするほどその事について考えてしまったりするのは世の常だろう


そんな時には仕事に忙殺されていることをありがたく思ったりして過ごす毎日



ある日タイトなスケジュールにぽっかりと空いた穴


チャンミンは単独の仕事があったり皆なにがしかの予定があって電話片手にしばしの躊躇



…仲間に連絡しようとして表れた画面を見つめた



あの日別れてから何回かの電話やLINEのやりとりは当たり障りのない話に終始して


…何よりも既読になっているのに現れず急にいなくなってしまったような1人



〈今ちょっと気まずいんだろ〉



〈ほっとけばまた来るから心配すんな〉



そのうち…近いうちに必ず


顔を合わせて酒でも飲んで
ゆっくり話をしよう



…そうしようと思っていながらもなかなか果たせないでいるのを実現させるチャンスだというのに何故かためらう心


その時ふと思い付いて…そのうち差し込んでくる考えが段々大きくなって最後にはいてもたってもいられないほど


悪魔の囁きに麻痺したような頭はルーレットみたいに回ってめまいを覚える


頭を離れない馬鹿みたいな考え…


〈急にオフになったり今日はひょっとしてついてるんじゃないか?〉


普段ならすぐする仲間への連絡に気分がのらないのも


今日はついてるから一勝負しろよなんて合図かも


なんて現実を否定して問題を先送りしてしまう疲れた…弱い心


〈ギャンブルでついた悪いツキを取り戻すなら同じ手でいけばあるいは…?〉


始めは馬鹿げていると思った考えがだんだん凝り固まって


〈もう一度行ってみたら今度はいい結果が出るんじゃないか?〉


気付いた時にはもうそうしなきゃいけないくらいの憑かれたような衝動


〈負けたままでいるのもなんだか悔しいし〉


〈第一向こうには貸しがあるんじゃないのか…?〉


熱に浮かされたみたいにとりつかれた考えを無視するのは難しい



ギャンブルをするのは悪魔と踊るようなもの


勝ち目は無い愚か者の為のゲームだと頭では解っていても


それでも…



画面を閉じて電話の電源をオフにして


逃げ出すみたいに部屋を後にした








明くる日顔を合わせるなりちょっと不思議そうなチャンミンの顔


「ヒョン…何かいいことでもありました?」


「いや…別に」


と、思い付いて


「イタリア行き楽しみだと思って」


「そうですよね…!」


と誤魔化した話に乗ってくるチャンミンの笑顔



「仕事の後だか合間だかにオフもあるみたいだし」


色々行きたいとこがあって…なんて話し始めるチャンミンの顔は明るく何だかほっとしたようで


僕は微かな罪悪感のまま告げた


「…最近ちょっと悪かったな」


告げると繕うポーカーフェイスの間の一瞬の表情


タブレットの上で止まる指先がゆっくりと動き出して



「ヒョン…僕になにかないんですか」


「何かって?」


「だから何か…話とか相談とか…」



何気ない口調…何気なさすぎる


物言いたげなチャンミンに僕は沈黙で答えた



仲間とのカジノ旅行はもちろんチャンミンも知っていた


でも詳しく話したりは余りしない…僕がチャンミンとキュヒョンとの旅行や遊びにいちいち口出ししないのと同じだ


もちろん聞かれれば喜んで答えるし相手が話してくれば興味深く聞くだろうけど


食事したり遊んだり…チャンミンだって仲間の何人かとは何回も一緒になっているし会えば親しく挨拶したりはするけど


今さら僕が仲間と出掛けたって根掘り葉掘り聞き出してくるわけではない


でもこの間の旅行から帰ってからは何だか少し怪訝に思っていたんだろう…



「旅行どうでした?」


あの翌日屈託なく聞いてきたチャンミンに


「まあ…」


低く言葉を濁すと驚いたような顔


仲間と会った後はいつも機嫌のいい僕のちょっと誇張した馬鹿話を期待していたんだろう


僕はつれない返事と態度でそれを裏切った


それ以上触れずにそっと仕事モードに移ったチャンミンに初めは感謝して…何故か


何故か苛立ってしまう説明のつかない感情



「ヒョン…?」


疑問符混じりの問いかけに顔をあげるとモバイル片手の少し困り顔


「僕は大丈夫だよ。何も話すことも無い…何も問題ないもの」



そう言って慌てて覗きこむ画面に広がるイタリアの風景


納得しかねるみたいにそれなら…と呟いたチャンミンに


曖昧に頷くとどこか行きたいところありますか?なんて空気をかえるように聞かれて


「そうだな…」


数々の世界遺産や素晴らしい景色が画面に溢れている


次々に思うまま眺めながら思わず画面をめくる指を止めたのは小さな紹介写真


美しい風景でも悠久の時の流れに佇む遺跡でも素晴らしい芸術でもなく


画面からこちらを見返す冷たいサイコロの蛇の目だった


ロケ地近くのカジノの記事


なんという事もない宣伝の記事が数々の文化的遺産よりも目に止まるなんて


中には前々から行ってみたかった場所もあるというのに全く心を動かされないことを感じて初めて



僅かに疑問を抱いた…

TIAMO8(東方神起ホミン小説)

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今にして思えば何から何まで上手く行き過ぎ


でも高揚した心に歯止めをかけるような冷静な頭は持ち合わせていなかった


ちょっと騒ぎ過ぎ熱くなりすぎかなと思っても仲間の誰かや自分にちょっと信じられないくらいの幸運が舞い降りてくるとなれば…


その度歓声と共にハイタッチしながらのファンダンゴ(ばか騒ぎ)


どのくらい経ってか不思議と時間の感覚が無い中でもさすがに皆の顔に疲労の影を認めあい



あっという間の時間を名残惜しみつつ勝利に酔いしれながら部屋をあとにした





次の日はもう皆なんだか気が大きくなって


遅い朝食を食べながら語り合う大げさに膨らませた話


あいつはどれだけ勝っただの俺は一晩で金持ちになっただの


こんなに勝っちゃうと俺達がこのカジノを買えちゃうんじゃないかなんて与太話


…負けた人間は誰もいなかった


でもそのことを誰も不思議に思わないまま


今日も儲けさせて貰おうなんてまるで王公貴族みたいに威風堂々とカジノに向かった




豪華な装飾を施されたエントランスを抜けて入り込んだ別世界


巧妙に閉ざされた空間…窓から見えているような景色さえすべてフェイクの人工的な外とは全く隔離された世界



昼夜時間を忘れてゲームに没頭させるための仕掛け


客に高揚した気分を保させるために酸素の量を調整しているところさえある


もちろんアルコールもフリーだ…酒で判断力の鈍ったプレイヤーほどカジノにとってありがたい客はいないだろう




カクテル片手のブラックジャックにメチャクチャな勘だけが頼りのルーレット


素人くさいブラフで挑むポーカーにバカラ


…恐る恐る始めたはずの勝負がいつの間にか本気になって


何だか怪しくなる雲行きに気付きながらも引くに引けなくなる勝負


回を重ねるごとに増えるギャラリーの中に心配そうな仲間の顔…すらもう眼中に無く





夜が明ける頃僕は途方に暮れて佇んでいた




支払いを終えて仲間の元へ



微妙に反らされる視線にわざと大きな声をあげて何気なさを装ったポーカーフェイス



肩を叩かれたりぎこちない慰めの応酬の中聞こえてしまう投げ捨てられた小さな台詞



〈あいつのスッた金は俺の年収より多いぜ…〉



心臓を貫く言葉



早まる鼓動を痛いほど意識しながらも聞こえないふりをするのが精一杯


〈馬鹿やめろよ〉


誰かの制止を振り切って聞こえてくる喧騒


〈なんでだよ…別にいいだろ?本当の事言って何が悪い?悪くないだろ?〉


〈やめろって…この酔っぱらい〉


背後のやりとりにチリチリとささくれ出す神経


〈酔っぱらって何が悪いってんだ…少なくとも俺はあんなふうに金をどぶに捨てるような真似はしないぜ…ま、したくても無理だけどな!〉


〈やめろって…ユンホに悪いだろ〉


〈なんでだよ…なあユンホ別に構わないだろ?〉


そう言って名前を連呼するのを慌てて止めている気配に振り向こうとすると別の腕が背後から回されて


〈いいからあんな酔っぱらいはほっとけ…な?〉


という言葉と共に強引に歩き出そうと肩に回された腕にこもる力


背後から止まない名前を呼ぶ声にやがて滲んでくる侮蔑の色


〈なんで無視するんだ?聞こえてんだろ…?おいユンホ?〉


まあまあ、となだめる声にかぶせて鋭く突き刺さる言葉


〈何だってんだ無視なんてしやがって…芸能人がそんなに偉いってのか?〉


その言葉に思わず振り返ろうとすると逆の方からさらに肩を抱かれ二人ががり…凄い力で強引に連れていかれそうになる


〈馬鹿いい加減にしろ!〉


そう後ろに向かって怒鳴り気にすんな、と口々に慰められて僕の抵抗は不発に終わった


固く握られた拳はそのままにして…




部屋に入り1人になってやっと少しだけ冷静になる頭



確かに僕は…


それがゲームでも何でも勝負になると熱くなりすぎるいつもの僕の癖


今更ながらの追憶の数々


最初にちょっと流れが悪いと感じた時にどうして止めれなかったのか


意味ありげな目配せや遂には言葉に出しての制止さえ受け付けずに


〈大丈夫大丈夫…今に見てろって〉


そんな風に誰かの止める手を振り払った微かな記憶


固唾を飲んで見守る視線が段々と反らされて冷たくなるのを痛いほど感じながらそれでもなお抗えない誘惑


思い出す記憶に身震いしながら鎮まりかえった部屋が
やけに広く寒々しく感じられて悪態をついて


勢いづいたまま立ち上がり頭を振ったその途端に沸き上がる後悔



景気付けのシャンパンに始まっていったいどのくらい飲んだのかわからなくなるくらい…


最後には自棄になって重ねたグラスに映る自分の姿にやっと気付かされた現実


とっくに勝負のついたゲームの終焉を僕だけが認めずにしがみついていた





まだ少しふらつく足取りのまま乱暴に服を脱ぎ捨てて


勢いよく迸るシャワーに打たれながらつい浮かぶ考えを振り払おうと…



正直いくら負けたとかそんな事はどうでも良かった


もちろんしまったな、と思ったし悔しいけどそれでも


一番堪えたのはあの時あの瞬間僕を出迎えた皆の顔


異星人を見るみたいに僕を凝視している姿にこだまする声



〈あいつのスッた金は俺の年収以上だって…〉


はじめは決して強くない口調…冗談めいた嘆きに隠れた何か


デビューしてからも色々あってからも仲間からは全く感じた事のない何か…



硬く目を閉じて頭から閉め出す思考



湯気で曇った鏡に映る自分の視線からそっと目線を反らせてうつむいた

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〈ラスベガスに行く前に近場で予行練習しよう〉


そんな風に簡単に決まった約束が果たされたのは去年の夏まだ早い時期だった



学生の時からの仲間何人かでばか騒ぎしながらの珍道中



迎えに来たリムジンにテンションもボルテージも上がりすぎ…みんな思い思いに楽しんでいる



仲間が勢揃いするのだって今はなかなか難しい


それぞれ家庭があったり地方にいたり住んでいる場所も仕事もばらばら



それが奇跡の様にすんなり日取りも何もかも上手く決まってこれはもう神様が楽しめって言っているんだなんて軽口混じりに意気揚々と乗り込んだ


韓国に何ヵ所かあるカジノは一つを除いて全て外国人専用に出来ている


ほとんどのカジノはホテルにあって僕達がここ何年か宣伝しているホテルにも立派なカジノがあった


滅多に無いことだし…と普段は滅多に使わないありとあらゆるつてを使ってのVIP待遇に興奮している仲間を見て僕も仲間入り…子供みたいにはしゃいで夢の扉を開けた



豪華さに圧倒されるようなエントランスを抜けてチェックインすると気の早い仲間の1人に早く行こうぜなんて急かされて


まずは小手調べと普通に遊んでいるとカジノの支配人が挨拶にやってきた



「よろしかったら特別室の方へ…ご友人もご一緒に如何ですか?」



思わず散らばった仲間の顔を見渡すと頷く顔や困惑顔…まちまちの反応を僕より素早く察して



「気が向いたらいつでもお声掛け下さい」



そう言って支配人が立ち去るなりなんとなく皆が集まってきた



「何だって?」


特別室に招待された、と言うと歓声を上げて一通りはしゃいでから急に1人が弱気な発言



「…服装とかいいのかな」


「別に何も言われなかったけど」


まあ僕達も一応いい歳なんだし…と見ると確かに服装はバラバラ


僕は初夏らしく麻のスーツを着て来たけど中はTシャツでノーネクタイ…もちろん正式なフォーマルでは通用しないだろう



何だか職業も年齢も分からない派手な格好の奴やそのまま仕事に行けそうなリクルートスーツ


そのうち皆の目がなんとなくアロハシャツを着ている1人に集中する


「…なんだよ」


問題はお前だな、なんて誰かの声に次々と上がる賛同に慌てた様子を笑いながら懐かしく見守った


あいつはいつも仲間の弄られ役だった


今は地元で家業を継いでいて…皆が驚いたけど結婚も一番早くて今では二人の良き父親だ



それを一番先にからかうのは仲間内で一番の問題児


誰彼なく喧嘩するのを僕はいつも仲裁していたけど後になって


〈ユノが入ると騒ぎが大きくなるんだって〉


なんて言われてしまった事も


今は職業も置かれた環境もばらばらな僕達


でも顔を会わせればすぐに気持ちは遥か昔の懐かしい記憶にかえってしまう


馬鹿なことをやって馬鹿みたいと言われた夢を馬鹿みたいに語りながらも


未來を信じていた…どんなに他人には馬鹿げていると思われてもなお掲げる夢があって


そう願って努力すれば必ず叶うと半ば傲慢なくらいの確信に満ちた気持ち


幼い日々を思うとつい浮かぶ赤面混じりの笑み


あの頃僕は本当に純粋だった…


ただ踊ることと歌うことが大好きでそれ以外の事は何も目に入らずに



そんな気持ちは一体どこに行ってしまったんだろう


あの頃僕達は信じていた



僕達は何にでもなれる



何でも出来るしそれぞれの願いや夢はすべて叶うだろう、なんて子供みたいに…


どれ程目指す道が困難で容赦なく高くそびえる壁に幾度となく阻まれて


汗や涙や傷だらけにならなければ手にはいらないとあの時知っていたら…?


でもあの頃の僕なら何も迷わずに飛び込んで行くんだろう…と呆れながらも昔の自分に何故か覚える羨望



物事はずっと単純でだから気持ちももっと簡単だった


だからこそ出来た約束


最初の10年が過ぎて落ち着いた頃皆でラスベガスに行こう!


(ラスベガス?なんでラスベガスなんだ?)


(だってエンターテイメントの本場じゃないか)


(…それを言うならブロードウェイじゃないのか?ラスベガスはカジノだろ)


(いいんだよ10年働いたご褒美なんだから)


なんて実際まだ働いてもいないのに先走る夢物語


(そうだよいいんだよユノはスターになるんだから)


(ラスベガスに行くんじゃなくて出てたりしてな)


どっとおこる笑いの渦の中で突然の宣言


(10年後デビューしていたら僕が皆を連れて行ってやるよ)


たちまちむせかえるような喧騒


本気かよ、と言って詰め寄る面々に


(約束するよ10年後僕がデビューして歌手になっていたら皆でラスベガスだ)


一通りの大歓声が収まるとからかい混じり


(デビューしてスターになったら全然あかの他人みたいになってたりしてな)


そういって背後から肩に回される腕に間髪入れずの突っ込み


(そりゃ相手がお前なら俺だってそうするさ…ユノ俺の事は忘れるなよ)


なに言ってんだ、と割り込む声


(こいつの事はなかったことにしていいよ…お前がスターになったら俺がお前の夢をいつも応援してたこと忘れるなよ)


調子のいい奴だ、なんて口々にかかる声


ひとしきりの応酬の後ふと
誰かの呟き


(…なんて言って10年経ってもまだ誰も稼いでなかったりしてな)


(やめろよ縁起でもない)


(ベガスどころかソウルに行くのだって怪しかったりして)


周りからやんやと野次られたりのばか騒ぎ…



盛り上がった空気が少し落ち着いたところで皆の顔を見渡した



(…どうなってるにせよ10年後約束な)


(そうだな…)


(何だよさめた奴だな。よし俺は乗った)


(俺もだ)


そうだよな行こうぜ、と気炎をあげた遠い昔…でも鮮明に甦る記憶



その記憶通りに誰かが行こうぜ、とかけた言葉のままに歓声をあげながら特別室へと行軍を始めた