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東方神起  ホミン小説

現実が軽く妄想を超えるホミンの素晴らしさをお届けします

胸キュンしたい人は是非お試し下さい

セレブリティ10(ホミン小説)

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急に濃厚になった空気に気後れはない



一歩近寄ると悪戯そうな笑みを浮かべてチャンミンが一歩下がってしまう



笑いながらもう一歩



「なんだよ」



苦笑交じりの問いにもさあ?なんて涼しい顔



また一歩、と下がろうとしてテーブルに置いた飲み物にチャンミンがぶつかってしまって僕は慌てて間合いを詰めた



「大丈夫か?」



聞くと頷いてちょっとだけばつの悪そうな顔




ぶつかって反対側に倒れたカップからテーブルの下に飲み物がこぼれ落ちているのを見て片付けようとするのをあろうことかチャンミンの腕に止められて愕然とする




「そんなのいいですから」



「でも…」



ほぼ白に近いラグにこぼれた飲み物が染み込んでいく…普段ならチャンミンの方が大騒ぎするシチュエーションなのに



「ヒョン」



そんな事を投げ打ってなお僕を呼ぶ声…僕だけを見つめてくる瞳



…明日になればきっと大騒ぎするんだろう



お気に入りだったのに


買ったばかりなのになんて言って嘆くだろう


いつの間にか僕のせいになってるかも



ヒョンが近寄るからですよ、なんて言って



理不尽にからかって怒ったふりをしたり…




…でも今は



見つめてくるチャンミンの瞳に僕は抗えない


大きくて黒目がちな瞳に魔法にかけられたような僕の姿が映っている



どこまでも優雅なチャンミンに比べて僕の姿は幾分滑稽だけどまあ仕方ない



だって僕はもう自分でも笑ってしまうくらいに恋している



───チャンミンに恋しているんだもの




手に入れられると確信した今になって急に今までどれほど飢えていたか思い知る




顔を近付けると視界の隅で微かにチャンミンが微笑んだ気がした












はっと目覚めると一瞬どこにいるのかわからない不安が、隣に眠っているチャンミンを感じた瞬間安らかに落ち着いていく


そっと見やるとよく眠っているようだった



背中から抱きしめようとして考え直し見知らぬ天井を眺めた



しばらくそうして横たわって何も考えずただ隣にいるチャンミンの存在を感じていた



冬の朝の暗さ…濃厚な闇の重さの中でいつもなら簡単にやってくる眠りが何故か訪れず



後ろ髪を引かれる気分だったけれども思い切って──というのは比喩的表現で実際にはチャンミンを起こさないよう静かに──ベッドを出てしまう



部屋を出る前にもう一度安らかに眠るチャンミンの姿を見ずにはいられなかった



リビングに戻ると昨日の惨状



予想通り大きな落ちそうもないシミがラグの真ん中に広がって…他が綺麗な分なおさらに主張してくるのを無視して窓から外を眺めてふと目に入った光景に心をとめられる



ここから見えるんだ…



何の変哲もない小さな公園



そこにチャンミンと2人で行った時の事が昨日の事のように蘇る




行ってみようかな、なんて冗談みたいに考えた思いがだんだん大きくなっていても立ってもいられずに



昨日借りたままのスウェットに帽子とブルゾンも拝借して


…携帯で時間を確認するとまだ5時なんて時間で一瞬止めようかと思ったけれども何だかもう落ち着かない



訳のわからない衝動のまま冬支度の街に飛び出した



今出たばかりのマンションを振り返った途端に自分のミスに気付いて何とも情けない気分


鍵ってどうなんだっけ?大体暗証番号なんて知らないし…


まあいいか、と歩き出す


いざとなれば電話すればいいや…なんて仕事以外では全くの適当人間になってしまう僕をチャンミンは最初信じられないようだった



部屋が汚いだの戸棚が開いてるだの…僕から言わせてもらえばどうでもいいようなこと


玄関に土足で入った時には真剣に諭されてしまってさすがにそれは止めたけど



2人の生活は窮屈な面もあった


顔を見たくも無い日だってあったはずなのに


でも離れて暮らす今僕の全ての行動にチャンミンの存在の影響がある


牛乳をパックのまま飲もうとしてチャンミンに怒られるかな?なんて気にしたり


教えてくれた音楽で目覚めたり…あそこのあれが美味しいとかたわいもない話



でもそんな些細な日常にこそ僕は飢えていたんだと思い知る


忙しく飛び回っている姿にもう昔のマンネ(末っ子)の面影はない


僕から見ても格好いい一人前の男になったチャンミンを見て嬉しいし誇らしいけどなにか一抹の寂しさがあって


…初めて2人きりになって再デビュー間もない頃はまだ幼さや脆さが垣間見えて



でもだからこそ僕は頑張れた…はずなのに


いつの間にか頼られている僕の方がチャンミンを頼っていて


僕達は初めて対等なパートナーになった


今だって普段はヒョンなんて呼ぶけどユノと呼び捨てにされたりおい、なんて言われたり


でも僕はそれが嬉しかった



よく知っていると思っている相手の事を実は全然知らなかったと思う驚きをとうに過ぎ


お互いに知らない事は無いと言い切れる関係になってなお


もっと深くと相手を求める贅沢な感情があることも…






寒さの中足早に歩く暗い街並みはさすがにまだ人影も無く静寂に包まれて


その静けさを破りながら歩くのは痛快だけれど何だか自分が闖入者になったようなおかしな気分


街の眠りを妨げる邪魔者になった気分だ



歩く速度で眺める景色はずいぶん久方ぶりな気がする


あまり知らない街でも車で通り過ぎる時より身近に感じるから不思議だ



何度か振り返って確認しながらなんとか公園にたどり着く


忘れ去られたみたいな小さな公園を進んでベンチに腰掛けると途端に蘇る記憶



あれは人生で最も最悪な日だった



今まで信じていた全てが塵になって


最後の望みも絶たれたあと


蜘蛛の子を散らすように周りから人がいなくなるのをただ呆然と眺めていた


事態を収拾しようとする虚しい試みも逆効果と知って…がんじがらめの中身動きもとれずに息をひそめているような生活


リーダーなのに何故グループを守れなかったのか、とバッシングの嵐の中にあって



錯綜する情報に困惑し激昂や絶望を繰り返し…地獄のような日々



絶え間ない疑問と疑惑にさいなまれながらもまだ燃えるような想いが僕を駆り立てていた


時に人は怒りや悲しみやどうしようもできないマイナスの感情からさえも生きる力を得ることが出来るのだと…



変化は突然現れた



食べている物飲んでいるもの…全ての味が消えた



着ているものや身だしなみすら自動的になって



何よりも歌うこと…踊ることにさえ意味を見い出せなくなっていることにさえもなんの感情もなく



…世界は色を失った




ただ乾いた真っ白な世界の中で心は不思議に穏やかだった



怒りも怨みも無く…かわりに喜びや愛すらも無い世界



何も考えず何も感じない世界の中で



人の輪郭すらぼやけていく…



初めは知らない人に始まってそのうち周りの人達



知り合いから友達、家族すらも



白いもやの中に溶け出して形を無くしていく


最後まで残った顔



誰よりも固く深い絆で結びついていた



素晴らしい時もあった…輝くような笑顔で笑いあった時もあったはずなのに



最後に残ったのは



僕達の間に立って必死にとりなそうとしている酷く動揺した今にも泣き出してしまいそうな顔



その向こうの顔はさっきまで見えていたはずなのにもう見えずに



ただチャンミンの姿だけが残像になって白いもやの中に浮かびあがる



記憶に残る最後の姿にさえこんな悲しい顔しかさせられないのかと知った僕の落胆や嘆きすら白い世界に消えて



でもチャンミンの事を思うたび


消えゆく残像を思い出そうとするたびに



白いもやの中に僕自身も消えてしまいたい衝動に待ったをかける





氷の世界…茨の道を歩むと知りながら僕について来てくれた



そのことだけでも僕には責任があった



嫌な思い…怨恨を抱いたまま辞めさせてしまうことだけはしたくない


でも現実はまさにそんな風に最悪な状況で


誰もが僕達は終わったと言い


自分でもそう思ってしまうほど…その中でチャンミンへの電話だけは欠かさなかった


コーヒー飲みに行こう、映画に行こう、何か食べに行こう


何度断られても構わなかった





スケジュールの無い日々


どころか自分の進退すらわからない日々の中で


ある日ふと友人に電話して…繋がらなかった



疑心暗鬼になり電話帳を片っ端から連絡して


何百人もの長いリスト



繋がったのはほんの一握り


今すぐ会っていいと言ってくれたのはほんの数人だった


その数人には丁寧に御礼を言って電話を切った



人に会うのが怖い…



会ってくれると言ってくれた人だからこそなお失望させるのが怖いなんて


知らない感情…始めての感情だった






そのまま何時間もただ座って



何度思い返してもわからない



何故、という疑問符だけが頭の中を駆け巡り


つい口走る罵りに自分を呪った



夜になってこわばった身体と疲弊した心のまま一人いることが耐え難く



震える手でチャンミンに電話した



…駄目だと思っていた



それまでの誘いは全て断られていたし



第一こんな心のまま誰かに会って…なんて出来そうにないのに



切ろうとした瞬間チャンミンの声が聞こえて


会いたい、とだけ伝えた



何がしたいとかどこに行こうじゃなくただ会いたいとだけ





絶対に断られるだろうという心の予防線は見事に破られた




〈どこに行けばいいんです?〉




それがチャンミンの答えだった



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