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東方神起  ホミン小説

現実が軽く妄想を超えるホミンの素晴らしさをお届けします

胸キュンしたい人は是非お試し下さい

セレブリティ11(ホミン小説)

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出掛ける前に鏡を見つめて映る姿に疑問を隠せない


何事も無かったみたいに涼しい顔



…険しい顔をしているはずだった


鬼のよう、悪魔のようであったとしてもいいような思いをしているはずなのに


そのことを悲しむべきか喜ぶべきかわからないままチャンミンに会いに行く今はただ安堵していた



〈…どこに行けばいいんです?〉



チャンミンに聞かれて咄嗟に思いつく場所は無かった


カフェやバーは論外だった


噂の渦中の僕達が2人揃っていれば落ち着いて話など出来る状態じゃなくなるだろうし


とりあえず僕の家の近くで会うことにした


もしもの場合実家に帰っているチャンミンの家の近くで騒ぎをおこしたくない


外に出てみると深夜のせいかそんな心配は杞憂なほど人影はまばらで


拍子抜けすると同時にほっとしていると現れたチャンミンの姿を見て胸が痛んだ



目深に被った帽子もその憔悴を隠し切れていない


最初にほんの少し合ったきりでずっと地面に落とされた視線を無理に合わせようとは思わなかった


楽しい話…好きそうな話題を選んで無理矢理に笑顔を作り並んで歩く


そのことに本当に安堵した


自分がまだそうして体面を保つことが辛うじて出来るのだと知って…



しばらく歩いて小さな公園に着いた


ちょっと寄ろうか、と誘うと無言で頷いたけどもうずっと投げやりなどうでもいいといった様子で来たのを後悔しているのがありありと見て取れる


そんなチャンミンを見るのは辛かった


これまで散々苦労して…異国の地でまで血の滲むような思いをして


これからやっと一番良い時を迎えていたはずの目の前のチャンミンは


まだ20を過ぎたばかりだというのに疲れきった老人の様な目をして全身から拒絶の空気を漂わせて



───これじゃいけない



思いつくままに気分を上げようと努力しても何だか空回りしてしまい



そのうち気まずく訪れた沈黙



一体僕は何をしているんだろう、と自嘲したくなる心を抑えて眺める光景は何の変哲も無い小さな公園



その途端に故郷のホス公園の記憶がつき刺さるように蘇った



僕は眩いステージに憧れてその公園でいつもダンスの練習に明け暮れていた少年だったことも



何もかも失われたなんてどうして思ったんだろう?



僕は元々何も持たずに田舎から出てきた少年だったのだから



1からまたやり直せば良いだけのことと思おうとしてもまだ混じる苦い思い



ひたすらに夢を追える情熱は失われた


その夢を信じる純粋さも




でも…



ほんの少し…一抹の希望の予感でさえ今の僕には十分過ぎるほど



瞳を閉じて思い出す…昔はそうやって目を閉じてステージに立つ自分を想像していた





目を閉じてみて…チャンミンにそう頼むと何言ってるんだというような態度



〈この公園を思い浮かべて見て〉



何ですか下らない、とつれない返事



〈いいからやってみて…ほら何が見える?〉



僕の質問に怪訝なチャンミンの顔



〈何って…別に何も〉



〈そんな事無いよ…花も咲いてるし…月も綺麗だ〉



不信な沈黙を無視して



〈向かいのベンチに見えない?仲のいいカップルとか〉



と言うと馬鹿にしたように鼻をならす



ややあって悪いと思ったのか小さな声で



〈…疲れたサラリーマンなら〉



なんて言うのに苦笑してしまう



目を閉じたチャンミンを眺めながら次々に描くイメージ



明るくて楽しそうなイメージのどれも僕には見えていない



チャンミンは知らないだろう



僕が描いたイメージ通りの世界…カラフルな童話のような世界を僕が見ていると思っているに違いない



でも構わない…それで構わなかった



僕が描いた架空の世界を思い浮かべて少しだけチャンミンの口元が微笑んだ気がしたので


その時僕に込み上げた感情



僕は今はまだ自分で夢をみることは出来ない


でもチャンミンに夢を見せてあげることは出来るんじゃないか、と…



そうしたらいつかまた僕自身もこの白い砂漠から抜け出して



カラフルな夢を見ることが出来るんじゃないだろうか…?



自分でも信じていない嘘をさも真実のように並べて笑って見せる



〈アルバムを出そう!〉



〈そんなの…〉



無理、とは言わせられない



〈夢で描ける事は全て実現可能なんだよ!〉


本当にそう思っている振り…信じている振りをしなくては



〈全曲シングルでもいいくらいの凄いアルバムにしよう〉



〈そんなの絶対…〉



目を閉じたまま下を向いて涙声混じりの抗議を無視してことさらに明るく描く夢物語



〈皆驚くよ…チャンミンの成長ぶりを見て〉



首を横に振って子供のような姿



〈歌番組にも出て一位を取っちゃおう…どんな曲がいい?〉



傍らで泣き出したチャンミンの背中に手をやってそっとさする



不思議な事にチャンミンの涙が乾ききった僕の心を癒やしてくれる



悲しまないでと思える相手がまだ僕にはいるんだと…




何も無い白い世界に白い嘘



僕は心に誓った



何の根拠も確信もない雲のような夢物語をどうやっても現実にしよう



チャンミンにはもう一度素晴らしい夢を見て


そうして笑顔になってもらわなくては



それだけがこの非情な時について来てくれたチャンミンへのささやかな恩返しになるだろうと…








今また目に見える光景はあの時と同じ様に見えて全く違う



世界は絵空事のように美しいばかりではないけれどそれでも



冬支度する木々や朝の新鮮な空気



昨日の楽しかったパーティー



──あれがつい何時間前の事だなんて!



愛情を持って思い浮かべることが出来る沢山の顔



そして…と心に浮かべたまさにその相手から静寂を破って鋭い着信音




「ヒョン…どこにいるんです?」



切羽詰まった声にしまった、と思う



何も言わず何の書き置きもなくこんな時間に相手がいなくなったら僕だって困惑する



ましてや夜を共に過ごしたあとで相手を不安にさせるなんて…



「ごめん!ちょっと…ちょっと外に」



慌てふためきながらの説明に電話越しながらも呆れたような気配が伝わってくる



「外って一体なんだってこんな時間に…」



と急に変わる声色



「何かあったんじゃないですよね」



「何もないよ!ごめんただちょっと…」



慌てて否定するとああ…とため息まじりの返事に滲む安堵に胸をつかれた


心配させた…ふと目を覚まして広いベッドの中で



最初は気にもとめていない



トイレかなんかいったんだろう…そのうちあんまりにも遅いんじゃないかと耳をすます



しんとした部屋で名前を呼んでかえってくる沈黙にベッドを抜け出して



そんなチャンミンの行動が手に取るように頭の中を駆け抜けた



心配させて悪かった、と謝ると黙ったまま



「本当に悪かったって」



自然に頭を下げると絞り出すような声



「僕は嫌ですよ…こんな時間に馬鹿みたいに馬鹿みたいなことする人の心配したり…」



「…ごめん」



「馬鹿みたいな時間に起きてしまうのも馬鹿みたいに汚れたラグなんてみるのも大嫌いですから」



「悪かったって」



でもラグの件は僕のせいじゃないような…なんて思うけど



僕の声に少し混じる笑み



「全部悪かった」




「何が可笑しいんですか…言っときますけどこんな時間に人様に電話することだって非常識で嫌なんですから」



僕はこらえきれずに笑ってしまう



耳元でチャンミンの抗議を聞きながら感じる幸せ



だってそうだろう?



汚れてクシャクシャになった招待状



真新しいラグに大きなシミ



非常識な時間の電話



どれもチャンミンが普段嫌がること…チャンミンのルールに反することなのに



そのルールを破ってしまう…そんなのどうでもいいと思ってしまう



相手が僕だから…そんな相手は僕だけだと



僕はもう知っているのに頭のいいチャンミンは何故気付かないんだろう



そのことがどんなに僕を幸せな気分にさせてくれるかも…






耳元の抗議がやんでしばらく



「ヒョン?」



聞いてるんですか、とためらいがちに小さな声



「今帰るよ」



告げると何だか低い声



「…ここは僕の家でヒョンの家じゃないんですから帰るなんて表現は不適切だと思いますけどね」


皮肉な物言いに苦笑しながら



「家じゃないよ…帰るのは」



聞いているチャンミンの顔を想像する




「チャンミナ」



「…」



無言でいても聞いているのがわかる気配



「…僕は帰ってもいいかな」



聞いてもかえってこない答え



「お前のところ…お前のそばにさ」



咄嗟に息をのんで押し黙る気配に心して待ちわびる返事



「ヒョン」



「うん?」



「今何時だと思ってるんです」



さあ…と辺りを見渡して何もついていない手首を眺める



腕時計も置いてきちゃったな…



「朝ですよ朝!しかもまだ6時なんて時間にする質問ですか?」



「じゃあいつならいいの?」



「ヒョン…」




「昼過ぎ?夕方とか?それとも深夜にでも聞きに行こうか…?」



電話の向こうで大袈裟なため息



そのくせバレないと思って盛大に照れているような顔を思い浮かべる



「くだらないこと言ってないで早く…」



途切れた言葉を補う



「帰って来いって?」



その途端にがらりとチャンミンの口調が変わって



「ああもう…そうですよさっさと帰って来て下さい僕の家だろうがなんだろうが…なんでもいいですから」




僕は笑った…声をあげて



初めて会った日の気弱そうなイメージ



少年から青年へ変わっていく…誰より背が伸びて喋り方もその内容も



あの日このベンチに座ってこらえきれず号泣していた姿



僕の記憶のカメラに映る何千枚何万枚の姿が今のチャンミンと重なり合って溶けていく



受話器の向こうの声を遮って帰るよ、と



「今すぐに帰る」



「…好きにしてください」




「じゃあ…」



そう言うとわかりましたなんて言ってからもお互いに相手が電話を切るのを見計らう一瞬の間



切れたはずの電話に耳を当てて感じる余韻



立ち上がりゆっくりと歩きだす歩調がだんだんと速くなりしまいには走り出した



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