東方神起ホミン小説 東方lovers

東方神起  ホミン小説

現実が軽く妄想を超えるホミンの素晴らしさをお届けします

胸キュンしたい人は是非お試し下さい

TENSE12(東方神起ホミン小説) 完結

にほんブログ村 小説ブログ 韓流三次元(ナマモノ)小説へ
にほんブログ村




ヒョンの言葉に固まった身体が自由になる


ゆっくりと肩に手をやるとおかしそうに


「いつもと逆だな」


「…たまにはいいんじゃないですか」


いつもだって僕の方が背が高いのに何故かヒョンといると自動的に受動的になってしまうことが多くて


でも僕は知って貰わなければ


ヒョンが僕を大切にしてくれるのと同じように僕だってヒョンを守りたい


これから長い時…長い間


今度は僕がヒョンを安心させてあげたい


〈ヒョンは大丈夫〉


そう言って微笑んで送り出してあげたいんだって…



〈僕は傷つかないよ〉


そう言って無理にでも微笑む残像


〈だから心配しないで…〉


そんな優しさがどこかへ行ってしまうくらい辛い哀しい想いをヒョンにはもうしてほしくないけど


でもいつかまたそんな時が来るんだとしたら


〈ヒョンは大丈夫〉


〈何があってもどこにいてもいつも僕が…〉


そう言ってあげられる時が来るといい



〈ヒョンは大丈夫〉



今はまだ無理でもいつかヒョンが僕の言葉を心待ちにしてくれる時が来るかもしれない



ヒョンが強さや優しさや辛い嫌な事やしまいこんできた何もかも脱ぎ捨てて


そしたらいつか僕の前でヒョンは泣いてしまうかも


感情をあらわに怒り狂って僕がなだめてあげる時が


今は無理でもいつか…


いつかは来てくれるだろう




ヒョンの背中に書いたいびつなかたちを思う


少し歪んだ僕のこころのかたち


ヒョンを愛することを恐れてしまう心のかけら


今はまだ外の世界に緊張してしまう僕たちの愛のかたちが


いつかは完全になって何も恐れずに


胸を張ってヒョンを愛してるって言える時が来るかもしれない


それまでは僕はこの少し欠けたようなハートで我慢しよう


それまではヒョンの優しさが


眼差しや励ましてくれる声


触れてくる指先…ヒョンの全てが僕の足りない部分を埋めてくれるだろう


僕のいびつなハートマークを…




ヒョンから不意におかしそうな声


「チヤンミナ…僕がさっきなに書いたか知りたくない?」


まあ…なんて曖昧な返事をかえすけど耳を寄せてヒョンの声を待つ仕草


肩を下げてヒョンの言葉を待ついつもの姿勢



穏やかな風の音の中で耳を掠めるヒョンのささやき



〈僕はね…〉




誰もいない静かな屋上は沈む夕陽に赤く染められて


だから僕もヒョンも少し赤くなったのは太陽のせい


お互いなんだかチラチラと伺う噛み合わない視線が


ふとした拍子にまともにかち合って


なんだか二人して顔を反らしてこらえきれずに笑いだす


「ああもう…なにやってんだか」


照れ隠し半分のヒョンの自嘲にざわめいて動き出す僕の心



期待と不安の入り交じった感情をすぐにヒョンは察するだろう


それまでほんの何秒か見つめるヒョンの横顔


遠い背中から始まったスタートラインが


今は近づいて触れあう身体


空を眺めてまだ僕の視線に気付いていないヒョンの横顔


真っ直ぐに前を向いて視線ははるか彼方


普通にしていると少し近寄り難い涼しげな顔


微笑むと途端に滲み出るやわらかな空気



少し肌寒くなっていく春の夕闇の中でただヒョンの横顔を



僕は見つめ続けた……



終わり


TENSE11(東方神起ホミン小説)

にほんブログ村 小説ブログ 韓流三次元(ナマモノ)小説へ
にほんブログ村




ヒョンの優しさ…その優しさがただ単に優しいだけじゃなく


その優しさがヒョンの厳しさや辛い経験に裏打ちされたものだからこそ僕の心に滲みるんだと


こんなにも痛いほど…


ヒョンの嘘を思う


僕のためにこれまでヒョンがついてくれていたであろうたくさんの優しい嘘


〈大丈夫大丈夫…〉


一人の仕事の時でもどこからか頭に響く声


〈大丈夫だよ…〉


そう言って伸ばされる指先

肩に置かれる掌

親指を立てて向ける笑顔





〈僕はお前ほど言葉が上手くないもの〉


いつの頃か言い間違いを指摘すると拗ねたようなヒョンの言葉


そんな意見がもう見当違い


言葉なんてどんなに綺麗に飾って難しく言い繕ったって伝わらなきゃ意味が無い


相手に伝わらなければ


ヒョンの言葉はそれが言葉になっていなくても声に出ていなくてもちゃんと僕に伝わっているもの


その眼差しや態度やヒョンがただ居てくれるだけでも


僕にはちゃんと…




「チヤンミナ見て…凄い綺麗だよ」



ビルの向こうに広がる夕日に目を輝かせて大げさにはしゃいで見せる



現場でもいつもそう…率先して明るく振る舞おうとする姿


辛ければ辛いほど微笑もうとする癖…




不意に背中に当たる感触に声を上げる



「…何ですか一体」



いいから後ろ向いて、と言って指で背中に何やら書いているらしい



今どき誰がこんなこと…と思いながらもヒョンの触れた場所に神経がいくのがわかるけど



「全然わかりませんよ」



えー、と抗議の声をあげて



「なんでわからないかな」


「知りませんよそんなこと…なんて書いたんです?」


聞いても当てないと駄目なんて言って悪戯そうな顔



「じゃあチャンミンの番」


なんて言って背中を向けて振り返った笑顔



「…嫌ですよ馬鹿らしい」



と言うとちょっとわざとらしく唇を尖らせて



「なんでいいじゃん」


「嫌ですって」


「簡単なのでいいから…」


「結構です。大体なにが楽しくて馬鹿みたいにいい年した男同士で…」



お前はもう…とちょっと本気混じりにため息をついて向きなおろうとしたヒョンの肩をつかんで



「じっとしてて下さい」


と言うと子供みたいな返事



向けられた背中の近さはいつもの距離


手を少し伸ばせばいつでも触れられる筈なのにそのくせ恐ろしく遠く感じることもある二人の間


重なり合う時には全て消え去ってしまう不安や疑問が離れるたびに増していた今まで…




「もういいよ。早く書いて?」



背中に触れそうになると震える指先



「チャンミン?」



焦れたように落ち着きの無いヒョンの背中に乱暴に描くいびつなかたち



緊張してひどく歪んだ楕円みたいになってしまった軌跡にヒョンは首をかしげて考え中



「わからないな…一文字だけ?」


「…文字じゃないです」



というと声を上げる



「なんだ先に言えよ」


もう一度書いて、の言葉に首を横に振って駄目ですよとつれない返事



「だって文字だと思ってたから…反則だよ反則」



「言い訳は見苦しいですよヒョン。大体文字より簡単ですから」



と言うと向きなおり指で楕円を空中に書きながら太陽かな…なんて言ってくる



「違います…はい終了」


「顔…じゃないし」



「もう終わりですって」


「三日月とか?」


「違いますよ。もうハズレですから」



しばらくぶつぶつ言いながら指で描いていた動きが急に止まって



ちら、と走らせてくる視線


思わせ振りな口の端に浮かんだ笑みが耐えきれないように馬鹿笑いに変わる



「俺わかっちゃった」


興奮すると広州弁が出て少し乱暴になるヒョンの言葉


向けられたにやけた笑いの意味に僕はちょっと照れくさく


「そうですか。良かったですね」


「体の一部だよな」


「もう終わりましたから」


冷たい返事にもめげずに


「一番大切なところだろ?」


「そんなの人によります」


「ほかにマークなんて無いじゃん…無いよね?」



なんて僕に聞いてきたらもうクイズでも何でも無いんだけど


相変わらずにやつきながら無遠慮な視線に顔が赤くなるのがわかる


ヒョンの言う〈一番大切なところ〉ではねあがる鼓動



しばらくからかい混じりの軽口の応酬が止むとゆっくりと少しだけ真面目な口調



「チャンミン…いい機会だから覚えておいて」


頷いて見つめると微笑んだ


そんなに見られると緊張しちゃうな、なんて前置きして不意に



「僕は傷つかないよ」


何の脈絡もない急な宣言に戸惑い始める心



「僕はもう傷つかない。少なくとも滅多な事ではね…そう決めたんだ」


「ヒョン」



「他の誰にどうこう言われてもそれがどんなに的外れの批判でもただ僕のことが嫌いで悪口を言われたって構わない。僕の…僕の大切な人以外からなら何を言われたって」


「ヒョン…」


「こんな考えは間違っているかもしれないけどでも僕はもう…傷つかないから」


だから心配しないで、と浮かべる笑みのやるせなさ



傷つかない…?



ヒョンの言葉に声を失う


傷つかないとうそぶき宣言するたびに厚くなるヒョンの鎧


それが本当は傷ついているからだと気付いていないヒョンの無自覚さ


痺れてしまったような頭に響くヒョンの声



「お前だけだよ」



見つめられて動けない体



「僕を本当に…本当の意味で傷つける事ができるのは…」



TENSE10(東方神起ホミン小説)

にほんブログ村 小説ブログ 韓流三次元(ナマモノ)小説へ
にほんブログ村




沈黙には二種類あると僕は思う


穏やかな暖かい…例えば春の日差しのようなそれと少しでも動けばその場の空気さえ粉々になってしまうような緊張を含んだそれが


ずいぶん昔僕はヒョンと二人きりになるのが怖かった


沈黙に陥らない為に馬鹿みたいに喋りまくったり反対にもう一切の気配を消したように黙りこくったり


ヒョンは全然気にしていないよう…いつも泰然として見えた


はしゃぎすぎたり熱くなったり…ステージのヒョンはそんなイメージが強いけど実際はちょっと違う


寡黙に自分の世界に引きこもっていることももちろんあってそんな時のヒョンが僕は怖かった


ステージと違う…皆でいた時には見えなかったヒョンの姿を見てしまうのが


今なら何故怖かったのか解る理由を最初は頭から否定して考えないように…何度も打ち消して拒否してきた想い


ヒョンを知るのが怖かった


一つ知ればもっと…また一つと際限なく沸き上がる感情の名前を恐れながらも止めることは出来ない


沈黙が苦痛でなくなって自然になりやがてそれは喜びになった


二人でいて…何も話さなくてもただそばにいるだけで


それだけで僕には良かったはずなのに


「チャンミン?」


ヒョンの手が頭をかすめた


「何考えてる?」


「…別に何も」


素っ気ない返事を取り繕うように顔をあげると何だかちょっと考えているようで

目で問いかけると小さな声


「…お願いがあるんだけど」


僕は思わず苦笑した


「ヒョンのお願いはもう嫌ですよ。なんですかまた隠し事ですか?」


僕の言葉にちょっと起き上がって


「違うよ」

「また追い払おうったって…」


首を振りながらの反論


「だから違うって。お願いっていうのは…」


何です?と耳を傾けた







「全くなんでこんなとこきたいんですかね」


振り返ると松葉杖をついたヒョンがゆっくりとついてくるのを確認しながら歩調を緩めた


簡単そうに見えてもやっぱり松葉杖をつきながらの移動は見るからに大変そうで

うっかりお願いなんてのに乗ってしまったのをちょっと後悔


「1日中部屋にいてみろよ…おまけにマネージャーも両親も廊下出ただけでなんかいやな顔するし」


「…それだけ心配してるんですよ」


…僕だってそうなんだけど


そんな考えを悟られたのか幾分慌てた様子でもちろん有難いけどさ、と付け加えた


〈屋上に連れて行って〉


そう言われても思わず聞きかえすことは無かった


練習生の頃一人になりたいと手頃な部屋に入って鍵をかけてこもってしまう僕の癖…それに対してよくヒョンは屋上に上がっていた


もっとも理由は知らない…僕のように一人になりたいのかそれとも風にあたりたいのか、ただ高いところが好きなだけなのか聞いたことは無い



寄宿舎が新しくなった時皆は喜んだけどヒョンは屋上が無いのを一人で嘆いたりしていた…


当時は気にも止めていなかったそんな記憶が不意に浮かぶ


屋上のドアの前まで来てしばらくヒョンを振り返って待ちながら試しにドアノブに手をかけると簡単に空いてしまって


不用心だな、と思わず口をついた


「まだ時々物干しに使ってるんだって」


「なんでそんなこと」


知ってるのかなんて愚問を呑み込んだ


人懐こいヒョンのこと…どうせ看護婦さんあたりに聞いたんだろう


先に中に入り背中でドアを押さえてヒョンが通るのを待つとありがとうなんて言って笑顔で


ゆっくりと歩く背中を見守りながらついて行く


余り使われていないような物干し竿を眺めやると


「今はほとんど業者に頼むか乾燥機なんだって」


「まあそうでしょうね」


「天日干しの方が気持ちいいのにな」


曖昧に返事をしながら屋上の端で景色を眺めているヒョンの横に並ぶ…と反対に並ぶように顎で指図された


ポケットに手を入れて煙草を取り出しゆっくりと火をつけて


僕と反対の方へたなびき始める煙を見て位置がえの訳を知る


ヒョンが煙草を吸うのを見るのは本当に久しぶり…



まだ二人で暮らしていた頃


朝起きるとヒョンがリビングでぼんやり煙草を吸っていて

挨拶しようとしたら少し風邪気味だったせいか軽く咳き込んでしまった


振り返って挨拶してきたヒョンが一瞬驚いたような顔をしたけどちょっと風邪気味で…と言う僕の言葉に頷くと

もう一度ゆっくりと一服してから煙草を揉み消して



それから二度と僕の前で煙草を吸わなくなった



それに気付いて何度かそれとなく水を向けてもいつもかわされる台詞


〈今は吸いたくないから〉


〈僕は歌手だから…喉を大切にしようと思って〉


〈ちょっと煙草切らしてて…〉


本当はヒョンに喫煙を止めて欲しかったからこれ幸いとすぐに問いただすのを止めてしまって


僕の前では吸わないのがもう当たり前になっていたのに



一言も発せずに景色を眺めながらひどくゆっくりと時間をかけて煙草を吸うヒョンの姿を見て何となく気付いてしまうある事実


あの記事にヒョンは怒っていない訳じゃなかった


怒って憤り地獄のような怒りを感じていたのにも関わらずそれを見せなかっただけなんだろう


僕のため…僕の怒りをなだめるために


そう思うと途端に解けていくパズルのようなヒョンの言葉や態度


ヒョンの横顔…鼻梁の整った綺麗な横顔を眺めながら静かに芽生える疑問


ヒョンは一体どれだけ


今まで一体どれだけ僕のために優しい嘘をついてきたんだろう?


〈大丈夫大丈夫〉


二人で活動するようになってから必ず舞台の直前や何かと気後れする僕にかけてくれる魔法の言葉


ヒョンの方が大変なはずだとわかっていてもいつも僕はこの言葉をヒョンに言わせてしまう


やれ寝不足だ、調子が出ない、体調が悪い…

もっと練習すれば良かった、練習しすぎてわからなくなった

時間が足りなかった、時間がありすぎた…


幾千もの言い訳と失敗への防御



そんな僕の甘えにいつも答えてくれる声


〈大丈夫大丈夫…〉


〈チャンミンは大丈夫だよ〉


ヒョンの描く夢…夢のような世界


〈夢で思い描けることは全部実現可能なんだよ〉


そう言って夢を現実にしてしまうヒョンの言葉を僕はただ信じてこれたけど


ヒョンが僕に夢を見せてくれるならヒョンには一体誰が夢を見せてあげれるんだろう?


誰がヒョンに大丈夫だって…


と思った瞬間思わず口走っていた


「ヒョンは大丈夫ですよ」


小さくなった煙草をくわえながら僕を見る怪訝な顔


深く息をはいて名残惜しそうに火を消すと何?と向けてくる視線


咄嗟に返事が出来ずに冗談混じり


「…僕の前でも煙草を吸って大丈夫ってことです」


そう返すと笑いながらそうか…なんて言うわりにまた吸う素振りは見せなかった


また景色に目をやるヒョンにつられて目を向けるといつの間にか赤く染まり始めた空が美しい


茜差す街並みには何故か郷愁の念がある


どこにいても帰りたいと思うみたいな不思議な感覚に囚われて物悲しいような気持ち


「チヤンミナ」


「はい?」


前を眺めながらのヒョンの呟き


「僕は大丈夫かな?」


ヒョンの言葉に心臓を掴まれる


「ヒョンは大丈夫ですよ…何があってもどこに行っても絶対大丈夫です…僕が保証しますから!」


勢いこんだ言葉に満足したように微笑みを浮かべて


ありがとう、と無言で伝えてくる眼差しのやわらかさ


その刹那衝動的に沸き上がる感情